2020 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスと脱落膜マクロファージのインフラマソーム活性化による不育症の病態解明
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19K18676
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
後藤 志信 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90591909)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インフラマソーム / 抗リン脂質抗体症候群 / 酸化ストレス / 脱落膜 / 不育症 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
不育症の発症頻度は妊娠女性の4.2%と決して稀ではない。不育症の25%は原因不明であり未だ確立された治療がない。近年加速する少子高齢化社会において、不育症病態を解明する意義は非常に大きい。 申請者は妊娠初期の胎盤形成期における脱落膜中のマクロファージに注目し、その炎症亢進作用が不育症病態に関与することを報告してきた。また、不育症患者の血液中・子宮内で酸化ストレス度の上昇を確認し、マクロファージの炎症応答機能の一つであるインフラマソーム活性化により誘導されるIL-1ファミリーサイトカイン(IL-33)が不育症病態に関与している知見を得ている。 本研究では、『酸化ストレス等を契機とした脱落膜マクロファージのインフラマソームの過剰な活性化が子宮内において炎症性サイトカインを誘導し絨毛浸潤抑制による流産を引き起こす』との仮説をもとに、ヒト臨床検体を用いたin vivoの検討及び細胞培養実験により検証を行い、原因不明不育症の病態解明及び妊娠維持メカニズムの分子的解明を目指す。 これまでに臨床検体(流産手術時に得られた脱落膜及び非妊娠時の血清)におけるインフラマソーム関連蛋白、酸化ストレス度の解析を行った。抗リン脂質抗体症候群(Antiphospholipid syndrome, APS)合併患者で血漿中の酸化ストレス度の指標となるd-ROMs及び抗酸化力の指標であるBAPをフリーラジカル解析装置を用いて解析したところ、d-ROMs、BAP共に優位に上昇しており既報告とも合致していた。APS患者で流産が引き起こされる分子機序については諸説あるが、酸化ストレス上昇が関与している可能性が示唆された。APSにおける酸化ストレス上昇による流産メカニズム解明により、原因不明不育症患者で酸化ストレス度の上昇している症例にも同様の機序が働いている可能性を考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非妊娠時の血漿中の酸化ストレス度の指標となるd-ROMsテスト及び抗酸化力の指標であるBAPテストを行ったところ、APS患者では対照群と比較してd-ROMsテスト、BAPテスト共に高値を示した。母体の子宮内膜が妊娠時に変化した組織である脱落膜を流産手術時に採取し、d-ROMs及びBAPテストを行いAPS群と非APS群で比較したところ、予想に反してAPS群は非APS群と比較して有意にd-ROMsが低値であり、BAPテストは高値の傾向があったが有意差はみられなかった。組織中の酸化ストレス度は血漿中と必ずしも一致しない可能性や、稽留流産と診断された後に採取された組織であるため、流産による変化や手術侵襲による変化が反映されている可能性も考えられた。 続いてインフラマソーム関連蛋白であるNLRP3及び脱落膜マクロファージに発現するCD14について組織中の発現を確認するため流産脱落膜組織を用いて蛍光多重組織染色を行った。脱落膜組織、絨毛組織共に抗NLRP3抗体、抗CD14抗体の染色性を認め、両者の共発現も観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト子宮内膜間質細胞セルラインを用いた培養実験を開始しており引き続き行っていく。エストラジオール、プロゲステロン、cAMPを添加し培養上清中のIGFPB-1及びPRL産生能、また細胞の形態変化を脱落膜化の指標とする。臨床的に有意差の認められたプロテアーゼ、サイトカインについて、各々の阻害剤や内因性インヒビターならびに過酸化水素水等の酸化ストレス物質を培養上清に添加し脱落膜化状態の変化を検討する予定である。 絨毛細胞株 (HTR8/SV40, JEG3等)や流産時にインフォームドコンセントの元に得られた子宮内組織から純化したEVTを用い、Matrigel invasion assayを行い絨毛細胞の浸潤機構へのインフラマソーム関連プロテアーゼ、サイトカインの関与を検討する。
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Causes of Carryover |
実験物品、消耗品を他財源にてまかなうことが可能であったため、次年度使用額が生じた。
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