2019 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンによる子宮体癌細胞の異方向分化誘導とその分子生物学的機序の解明
Project/Area Number |
19K18691
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
寺川 純平 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (90777731)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 子宮体癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮体癌において、癌進展に伴う扁平上皮化生の誘導が、PTEN欠損を有するヒト臨床検体とマウス病態モデルの両者に共通して認められる。このことから本研究は、PTENを欠損した癌細胞では癌の進展を抑制する異方向への分化・成熟誘導機構が存在するとの新しい仮説に立脚し、 異方向分化を誘導する責任因子と機序の解明を目指す。 子宮体癌を自然発症する子宮特異的Pten欠損マウスを用い、特にエストロゲンの作用に着目して解析を行なっている。子宮特異的Pten欠損マウスでは、子宮体癌の進展に伴い扁平上皮化生の誘導が認められたが、実験的処置により一定濃度以上のエストロゲンあるいは合成エストロゲンの持続投与によりさらに強く誘導されることが明らかになった。マウスでは、子宮内膜上皮および膣・子宮頚部の上皮は全てミュラー管上皮に由来する。発生時において、単層の未分化なミュラー管上皮細胞が重層扁平上皮である膣・子宮頚部の上皮に分化するためには、間葉組織からの因子による上皮細胞での主に3つのシグナル伝達経路の活性化、それらによる転写因子dNp63の発現誘導が必須である。このことから、発生・分化時に必須なこれらのシグナル伝達経路や転写因子の活性化が、子宮体癌で認められる扁平上皮化生にも重要であるかどうか解析するとともに、エストロゲンが子宮体癌細胞あるいは細胞周囲の微小環境にもたらす影響について、分子生物学的な作用機序を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮特異的Pten欠損マウスにおける子宮上皮での扁平上皮化生について、①重層扁平上皮マーカーを発現する細胞は性周期の開始前より少数認められること、②扁平上皮化生は、性周期の開始時期から子宮管腔の中心より徐々に誘導されること、が明らかになった。この間、子宮上皮でのケラチンの発現は単層上皮型から重層上皮型へと変化したが、その発現は同じ細胞で一致しなかった。 子宮特異的Pten欠損マウスへのエストロゲン投与実験により、一定濃度以上のエストロゲンの持続投与あるいは合成エストロゲンの持続投与が扁平上皮化生を強く誘導することが明らかになった。エストロゲン投与後のPten欠損子宮内膜での遺伝子発現変化、蛋白質発現変化について、現在詳細な検討を行っている。 今後細胞系譜追跡実験を行うため、必要となるマウス系統の導入と予備的な実験を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
子宮体癌での扁平上皮化生の進展において、1. 少数の上皮細胞の異方向への分化誘導、2. 異方向分化した細胞の増殖および細胞の置換、の2つのステップを想定し、扁平上皮化生を引き起こす細胞集団の追跡を今後行う予定である。細胞集団の追跡を行うために、①レポーターマウス系統を用いた細胞系譜追跡、②細胞増殖マーカーを用いた細胞系譜追跡、③組織再構成による扁平上皮化生の誘導実験を行う。また、責任因子同定のためにエストロゲンによる子宮特異的Pten欠損マウスの子宮内膜への影響について引き続き詳細な解析を行う。
|
Research Products
(4 results)