2021 Fiscal Year Research-status Report
血管新生促進因子バソヒビン2を標的とした新たな婦人科がん治療法の開発
Project/Area Number |
19K18702
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小柳 貴裕 自治医科大学, 医学部, 助教 (90742122)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 婦人科がん / バソヒビン2 / 微小管制御 / 細胞周期 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
バソヒビン2 (VASH2)はがん細胞特異的な血管新生促進因子であり、血管新生阻害療法にむけた基礎研究が進んでいる。VASH2を標的とするsiRNAをアテロコラーゲン保護下に卵巣がん皮下移植マウスモデルに投与すると、血管新生抑制を介した抗腫瘍効果を認めた。また抗VASH2抗体を卵巣がん皮下移植マウスモデルに投与するとベバシズマブと同等の抗腫瘍効果を認めた。 VASH2は微小管重合に寄与するチューブリン脱チロシン化作用(TCP活性)を有することが新たにわかった。パクリタキセル(PTX)は微小管脱重合阻害剤であり、がん細胞内においてVASH2と何らかの相互作用を示す可能性がある。卵巣がんおよび子宮頸がん細胞株についてVASH2ノックアウト株を樹立し、PTXに対する薬剤感受性を検討した。CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術によりVASH2をノックアウトした卵巣がん細胞株(SKOV-3、SHIN-3)および子宮頸がん細胞株(HeLa、SiHa)を樹立した。VASH2ノックアウトは2次元培養における細胞の倍加時間に影響を与えず、3次元培養の細胞集塊径にも有意差を認めなかった。ウエスタンブロット法では、VASH2ノックアウト株においてPTX曝露による脱チロシン化チューブリン発現の亢進が抑制された。薬剤感受性を評価したところ、VASH2ノックアウト株ではPTX感受性がコントロールに比べて有意に増強した。一方でシスプラチンについては薬剤感受性に差を認めなかった。さらに、VASH2ノックアウト株ではCyclin B1発現が増加しており、細胞周期がM期中期で停止している細胞の割合が増加してPTXに対する薬剤感受性が増強したと考えられた。 VASH2阻害療法は、腫瘍内微小環境における血管新生阻害と腫瘍細胞内の微小管活性阻害の両面から腫瘍増殖を制御しうる新たな治療戦略となることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣がん細胞株においてVASH2をノックアウトすると、細胞内の脱チロシン化チューブリンが減少、サイクリンB1発現が増加し、微小管脱重合阻害剤であるパクリタキセルの薬剤感受性が増強することを学会報告および英論文報告した。この現象のさらなるメカニズム解明のため、VASH2ノックアウト卵巣がん細胞株についてRNAシークエンスを行い、細胞周期に関連する複数の遺伝子発現変動を確認した。このうち特に変動の大きいものとしてMCM2(mini chromosome maintenance 2)などいくつかの遺伝子を抽出しており、卵巣がん細胞でノックアウト株の樹立を進めている。 以上より、本研究はおおむね順調に進展しているものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
VASH2のノックアウトは細胞増殖や生存には直接影響しないため、VASH2以外の脱チロシン化酵素の存在が示唆される。VASH2ノックアウト卵巣がん細胞株(SKOV3)についてRNAシークエンスを行ったところ、細胞周期に関連する複数の遺伝子発現増加・低下を認めた。今後はオントロジー解析やパスウェイ解析等を加えて、発現変動遺伝子のうち特に変動の大きいものや治療標的となりうる因子を抽出し、ノックアウト等の方法でがん細胞内の微小管活性や抗がん剤感受性に与える影響について評価する。さらに、バソヒビン2を過剰発現させた系においても同様に検討し、パルテノリドなどの脱チロシン化阻害剤の効果についても検証する。また、細胞株の種類を増やすとともに、子宮体がんなど他の婦人科がん細胞株についても同様の事象が認められるかを検討する。 担癌マウスを用いたin vivoの解析について、我々はVASH2に対する中和モノクローナル抗体をすでに樹立しているため、抗VASH2抗体による治療実験を行い、腫瘍内における微小管活性の評価、既存の抗がん剤との相乗効果について評価する。
|
Causes of Carryover |
物品購入についてはおおむね計画通りに予算を執行できた。旅費については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け出張の多くがキャンセルとなったため、計画よりも支出が少なくなった。一方で、Web学会参加費をその他の支出費目で計上した。また、論文作成・英文校正費用やRNAシークエンスデータ解析費用もその他の支出費目で計上したため、計画よりも支出が増加した。 次年度は新型コロナウイルス感染症拡大の状況によるが、学会参加・発表を多く予定している。また、英論文の英文校正や論文掲載料での支出が見込まれる。物品購入についても計画的に予算を執行できるように実験を進めている。 以上より、次年度使用額が生じました。
|
-
[Journal Article] Knockout of vasohibin-2 reduces tubulin carboxypeptidase activity and increases paclitaxel sensitivity in ovarian cancer.2021
Author(s)
Koyanagi T, Saga Y, Takahashi Y, Tamura K, Yoshiba T, Takahashi S, Taneichi A, Takei Y, Urabe M, Mizukami H, Fujiwara H.
-
Journal Title
Cancer Medicine
Volume: 10
Pages: 2732-2739
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-