2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K18719
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
工藤 直美 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (30770143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 好酸球性中耳炎 / 上皮性サイトカイン / 樹状細胞 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
モルモットに対して卵白アルブミン(OVA)の腹腔内投与による全身感作および中耳腔への局所投与を行って作成したモデル動物の側頭骨標本を用いた。 これまで我々は、免疫染色によってモデル動物の中耳粘膜、特に耳管周囲の粘膜上皮に、上皮性サイトカインの一つであるTSLPの存在することを報告していた。また予備実験によりCD11c陽性細胞が同じく中耳粘膜に存在することを確認していた。 さらなる研究として我々は、TSLP受容体の免疫染色を行い、その陽性細胞の分布がCD11c陽性細胞と一致していることを確認した。この事実より中耳粘膜にTSLPの刺激を受けて免疫反応を惹起する樹状細胞であることが示唆された。またCD11cとTSLP受容体の蛍光免疫染色によっても同様の結果が得られた。またIL-25, IL-33という他の二つの上皮性サイトカインについても免疫組織学的に検討し、中耳粘膜において陽性となる細胞を確認した。 CD11cとTSLP受容体が陽性となる細胞の分布を観察すると、先に我々が報告したTSLP陽性細胞と同様に耳管周囲の粘膜に多く分布していることは大変興味深い結果であった。好酸球性中耳炎の発症に関しては不明な点も多いが、患者の一部に耳管開放の所見がみられること、また患者の中耳貯留液内に真菌や黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンに特異的なIgEが検出されていることから、上気道における抗原物質が経耳管的に中耳腔に侵入することが発症の契機となる可能性が示唆されている。本研究の結果はその発症機序に対して一つの根拠を与えたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において明らかにしたいことの一つに、好酸球性中耳炎における上皮性サイトカインからの、自然免疫系の関与を挙げていた。今回の研究からその目標を達成することができたと考えている。IL-25, IL-33の免疫染色の結果からモデル動物においてこれらの上皮性サイトカインが関与している可能性が示唆された。研究計画に記載したIL-33などの前投与によるモデル動物作成の簡素化についても実行可能性が高いと考えられるため、その意味でも研究の進展につながっていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は好酸球性中耳炎モデル動物の作成について、その作業の簡素化のみならず、より生理的な状態に近い疾患モデルを目指していきたいと考えている。 そのためにはIL-33、Lipopolysaccharide (LPS)、プロテアーゼなどの前投与により免疫反応を惹起させ、好酸球性炎症の発症を促進させることを計画している。これによりモデル動物作成の簡素化に成功すれば、内耳の血管拡張など形態学的な変化の観察からデータを採取し、それを統計的に検討してより質の高い研究につなげることができると考える。
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Causes of Carryover |
消耗品や実験試薬、抗体などの購入費用が予定より少なく抑えられた。また学会参加にかかる旅費が少なかった。次年度は動物実験の占める割合が多くなると考えられ、それにかかる消耗品や得られた検体に対して実験を行うための試薬や抗体などの購入が多くなると考えている。
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Research Products
(2 results)