2019 Fiscal Year Research-status Report
Therapeutic efficacy prediction based on DNA methylation, and elucidation of molecular mechanism in HNSCC oncogenesis
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19K18722
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
黒川 友哉 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (80837120)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中咽頭癌 / エピゲノム / 化学放射線療法 / 治療効果予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究では、中咽頭癌治療体系において遺伝子メチル化解析技術を活用し、放射線治療の効果予測マーカーを樹立することを目的とした。 【方法】根治的放射線治療を受ける前の中咽頭癌生検検体(n = 40, training cohort)を用い、Infinium 450Kによる網羅的メチル化解析を実施した。階層的クラスター解析及び治療効果と相関するメチル化遺伝子の検討からマーカー遺伝子候補を抽出した。候補遺伝子による効果予測性能をROC解析により算出し、pyrosequenceによるメチル化状態の検証及びマーカー遺伝子の絞り込みを実施した。検査性能の検証のため、新たな中咽頭癌生検検体(n = 35, validation cohort)を用い、予後に与える影響を含めて本検査の有用性を検討した。 【結果・考察】training cohortにおいて、DNAメチル化と良好な治療効果との相関が明らかとなった。治療奏効例で最も有意にメチル化されていた10遺伝子による効果予測能は、感度92%、特異度93%、正診率93%、AUC値0.96と高精度であった。当該10遺伝子のうち、pyrosequenceによりメチル化状態が検証された8遺伝子でも、高い治療効果予測能が示され、当該8遺伝子からなるマーカーパネルを構築した。Validation cohortにおいても、マーカーパネルと治療効果との有意な相関(P = 3 × 10-6, fisher’s exact test)及び高い検査性能(感度96%、特異度89%、正診率94%、AUC値0.98)が検証された。本検査による治療効果予測能は、中咽頭癌の予後因子として知られるHPV感染の有無にかかわらず認められた。 【結論】本研究で樹立されたマーカーパネルの高い効果予測能が検証され、今後さらなる検討により、臨床への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体採取状況について、平成31年(令和元年)度の化学放射線療法治療開始前の中咽頭癌患者から得られた臨床検体採取数は23症例であり、概ね計画どおりであり引き続き検体採取体制が維持されていることから研究進捗は概ね計画どおりである。 本研究では、治療効果予測マーカーの確立を目的に、プロモーター領域DNAメチル化の網羅的解析を行い、放射線治療効果と関連する遺伝子群の探索がなされた。40例の中咽頭癌症例よりなるtraining setにおいて、Responder群とDNAメチル化との有意な相関が示され、さらにResponder群とNon-responder群との比較から効果予測マーカー候補として10遺伝子が抽出された。そのうちpyrosequenceによるメチル化状態の検証が可能であったのは8遺伝子であり、実用性の観点からこの8遺伝子で構築される効果予測マーカーパネルが提案された。35例の中咽頭癌症例よりなるvalidation setにおいて、本マーカーパネルによる効果予測性能は感度96%、特異度89%、正診率94%、AUC 0.98であり、その有用性が示された。無増悪生存期間及び全生存期間との相関解析でもその有用性が示唆され、しかもその結果はHPV感染の有無とは独立したものであることが示された。 以上、今年度の研究計画に概ね則った形で順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、これまでの研究により樹立された効果予測遺伝子の機能解析をHPV陽性及び陰性咽頭癌細胞癌細胞株を用いて実施中である。マーカー遺伝子の一部について、ノックダウンによる放射線感受性への影響、細胞浸潤能及び細胞遊走能への影響を評価し、これらの遺伝子がエピジェネティックな発現制御をされることにより治療予後にどのように寄与しているのか、引き続き検討していく。 加えて、症例数を増やした上で、治療効果予測性について層別解析を行うことで、治療効果予測性能が最大に発揮される患者層の同定及びその機構について検討を行う。 以上の検討を進めることで、治療効果予測マーカーパネルの社会実装に向けたさらなる進展を図る。
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Causes of Carryover |
Infinium 450K のrun試薬について、他の研究室と共有することにより経費の節約が可能であった。 一部、データにあったことから、次年度に再検討の際、繰越金を使用する予定である。 また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、参加予定(ポスター発表採択済み)であったAACRの開催が延期となったため、当該経費が浮く形となった。 次年度以降に開催の海外学会に参加する際に、繰越金から捻出する予定である。
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