2020 Fiscal Year Research-status Report
Therapeutic efficacy prediction based on DNA methylation, and elucidation of molecular mechanism in HNSCC oncogenesis
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19K18722
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
黒川 友哉 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80837120)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中咽頭癌 / エピゲノム / 化学放射線療法 / 治療効果予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究では、中咽頭癌治療体系において遺伝子メチル化解析技術を活用し、放射線治療の効果予測マーカーを樹立することを目的とした。 【方法】前年度の研究により樹立したマーカー遺伝子のうち特定の遺伝子における治療効果予測性能の高い遺伝子について、siRNAを用いてknockdownした上で、細胞増殖能及び浸潤能について検討した。 【結果・考察】効果予測マーカーパネルとして抽出された8つの遺伝子それぞれの治療効果予測能は、感度75-95.8%、特異度53.8-84.6%、正診率75.7-83.8%であった。これら8つの遺伝子のうち、3遺伝子(ROBO1, DPYSL3, ELAVL2)において、knockdownにより咽頭がん細胞株の増殖抑制が認められた。一方で、invasion assayではいずれの遺伝子でも細胞浸潤能に及ぼす影響は明らかではなかった。また、これら細胞増殖にかかわることが示唆された3遺伝子は、GO termにおける「Cell adhesion」や「Ras protain signal transduction」に含まれており、咽頭がん細胞においても細胞接着や増殖といった癌の進展機構にかかわる可能性が示唆された。 【結論】昨年度に実施された先行研究で樹立されたマーカーパネルの高い効果予測能が検証された。この中に含まれる遺伝子のうち、3つの遺伝子が細胞増殖にかかわることが明らかとなり、マーカーパネルによる治療効果予測メカニズムの一旦をになうことが推察された。今後さらなる検討により、これらの遺伝子の治療自体への影響および臨床への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体採取状況について、令和二年度の化学放射線療法治療開始前の中咽頭癌患者から得られた臨床検体採取数は20症例であり、概ね計画どおりであり引き続き検体採取体制が維持されていることから研究進捗は概ね計画どおりである。 本研究では、先行研究により高い治療効果予測能が示された治療効果予測マーカーにおける各遺伝子の機能解析から、効果予測メカニズムの探索がなされた。8つのマーカー遺伝子それぞれ個別での治療効果予測能はそれぞれの治療効果予測能(正診率)は、おおむね正診率75.7-83.8%と高かった。これら8つの遺伝子のうち、3遺伝子(ROBO1, DPYSL3, ELAVL2)では、咽頭がん細胞株の増殖抑制にかかわることが示唆されており、これらの遺伝子単独での治療効果予測能(正診率)はROBO1, DPYSL3, 及びELAVL2でそれぞれ81.1, 78.4, 及び75.7%と比較的高いものであった。一方で、これらの遺伝子はinvasion assayの結果から、浸潤能への寄与は現時点で明らかではなく、これまでの知見に基づくと「細胞接着や増殖能に関連することが示唆されており、これが治療効果予測メカニズムにつながる可能性が見出されつつある。 以上、今年度の研究計画に概ね則った形で順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、これまでの研究により樹立された効果予測遺伝子の機能解析をHPV陽性及び陰性咽頭癌細胞癌細胞株を用いて実施中である。マーカー遺伝子の一部について、ノックダウンだけでなくCRSPR-Cas9を利用したノックアウトによる放射線感受性への影響、細胞浸潤能及び細胞遊走能への影響を評価し、これらの遺伝子がエピジェネティックな発現制御をされることにより治療予後にどのように寄与しているのか、引き続き検討していく。 加えて、症例数を増やした上で、治療効果予測性について層別解析を行うことで、治療効果予測性能が最大に発揮される患者層の臨床病理学的特性の同定及びその機構について検討を行う。 以上の検討を進めることで、治療効果予測マーカーパネルの社会実装に向けたさらなる進展を図る。
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Causes of Carryover |
Infinium 450K のrun試薬について、他の研究室と共有することにより経費の節約が可能であった。 一部、解析データが不足している実験項目が認められたことから、次年度に再検討の際、繰越金を使用する予定である。 また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、参加予定(ポスター発表採択済み)であったAACRの開催が延期となったため、当該経費が浮く形となった。 次年度以降に開催の海外学会に参加する際に、繰越金から捻出する予定である。
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