2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性副鼻腔炎の白血球浸潤の解明と炎症との関連性の解析
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19K18726
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
堤内 俊喜 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特別研究員 (60720084)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 好酸球性副鼻腔炎 / 非好酸球性副鼻腔炎 / L-セレクチン / アスピリン喘息 / 硫酸化シアリルルイスX / アレルギー性鼻炎モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
好酸球性副鼻腔炎における好酸球浸潤機序の解明に際し、好酸球性副鼻腔炎および非好酸球性副鼻腔炎において、好酸球浸潤の最初のステップで炎症血管に発 現するPNAdの発現率が有意に好酸球性副鼻腔炎において高いことを確認した。その成果について、2020年8月刊行のアレルギーと臨床誌に投稿を行った。 その情報をもとに、好酸球性副鼻腔炎の重症度や喘息・アスピリン喘息(AERD)の合併症や臨床パラメータが、血管数の発現などと相関し、炎症の指標と なるかについての解析を引き続き行っている。 具体的には血液中好酸球数、組織中好酸球数、CTスコア、血液中炎症反応値などと、血管発現数の相関関係を解析している。 また、好酸球での炎症と類似した機序や作用で、好中球での炎症が起きているかについて非好酸球性副鼻腔炎の鼻粘膜を用いて、解析を行う予定であるがそれら血管に発現するセレクチンに対しての特異抗体を作成し、それらを反応させられる条件を現在模索している。 また、好酸球性炎症として好酸球性副鼻腔炎とは別の病態であるアレルギー性鼻炎に着目し、それらモデルマウスの鼻粘膜中の好酸球浸潤およびPNAd陽性血管の発現を調べ、抗アレルギー薬を投与することでその血管発現に差が出るかの解析を行う予定である。シラカバ花粉モデルマウスで、実際に鼻粘膜を染色してみたがPNAd陽性血管の発現が、通常モデルのマウスと差がなかったため、好酸球浸潤をより起こさせたモデルマウスの作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、好酸球性副鼻腔炎の鼻粘膜の炎症性血管内皮上に発現している硫酸化糖鎖構造に着目し、そのリガンドが好酸球上に発現していること、およびアスピリン喘息を合併している症例においてはさらに多くのリガンドが発現しており炎症の強さに伴い発現数が上昇している可能性が確認された。 臨床パラメータとの相関については、検体数を増やしてさらなる解析を行っているほか、現在解析中のパラメータ以外についても候補を模索しているところである。 好酸球上に発現しているシアル酸結合Ig様レクチンの特異的結合糖鎖を認識できる抗体の作成はまだ行えていない。 一方で好中球炎症にかかわるリガンド認識抗体については完成しているが、実際の鼻粘膜検体に対しての使用の条件をまだ模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
好酸球性副鼻腔炎の重症度と、好酸球炎症の指標となりうる発現血管の相関、また臨床パラメータとの相関などを解明すれば、今後の予後予測因子や治療選択の一助となる可能性があり現行のさらなるデータ解析を継続する予定である。 今回好酸球性副鼻腔炎で解析した糖鎖構造や炎症浸潤機序の一部が、アレルギー性鼻炎でも起きているとすると、炎症改善前後での発現差などを解析することで、重症度や治療効果病態解明の一助となる可能性がありそちらについても引く続き行っていく。マウス検体、ヒト検体いずれも使用することでより成果につながるよう尽力したい。 上記記載の抗体の作用条件については、引き続き技術的サポートを依頼しながら継続する。
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Causes of Carryover |
本年度では、使用する予定であった試薬やキット分の費用が余ったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、引き続き必要な試薬やキットの購入、またアレルギー性鼻炎モデルマウスの購入や鼻粘膜など上気道への好酸球浸潤モデルマウスの作成などに必要な試薬、キットの購入、経過記録用の機材やパソコン周辺機器、検体採取に必要な機材や参考書の購入をする予定である。 また、新型コロナウイルスの蔓延による影響に伴い、研究機関への出向が困難となるタイミングなどが生じたため次年度への引継ぎが生じた。
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