2019 Fiscal Year Research-status Report
新規オートファジー誘導タンパクを用いた感音難聴の病態解明と新規治療戦略
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19K18747
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岸野 明洋 日本大学, 医学部, 助手 (80825307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内耳 / 感音難聴 / 小胞体ストレス / オートファジー / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
感音難聴は最も頻度の高い身体障害の一つであり、新規治療法の確立のために更なる病態生理の解明が求められる。近年、感音難聴の病態に小胞体ストレスおよびオートファジーの機能障害が深く関与することが報告された。小胞体ストレスは、高次構造の異常な折りたたみ不全タンパク質が小胞体内に蓄積することによって引き起こされる細胞内ストレスであり、神経変性疾患や老化などの様々な病態に関与する。オートファジーは細胞の恒常性維持のために非常に重要な役割を果たす細胞内分解機構である。しかしながら、内耳感覚細胞における小胞体ストレスとオートファジーの関連性は明らかでない。本研究では内耳培養細胞を用いて、小胞体ストレス下の内耳感覚細胞におけるオートファジーと細胞死の関連性を分子生物学的に解明することを目的とする。 内耳感覚細胞としてHEI-OC1細胞、小胞体ストレス誘導剤としてツニカマイシンを用いた。ツニカマイシンによる小胞体ストレス負荷は内耳培養細胞において細胞死を誘導することを認めた。これまでにも、持続する小胞体ストレスはアポトーシスを誘導すること報告されてきた。本研究は内耳培養細胞において、ツニカマイシン処理による小胞体ストレスはアポトーシスのみでなく制御されたネクローシスであるネクロプトーシスも誘導することを見出した。オートファジーと小胞体ストレスによる細胞死の関連性を検討するたえに、オートファジー関連遺伝子であるAtg7をノックダウンし、オートファジーの機能障害のある細胞を作成した。この細胞をツニカマイシン処理して細胞生存率を測定した。ツニカマイシン処理したAtg7ノックダウン細胞はコントロール細胞と比較して有意に細胞生存率の低下を認めた。これらの結果は内耳感覚細胞においてオートファジーの機能障害は小胞体ストレスに対する脆弱性を増大させることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内耳培養細胞において、ツニカマイシン処理による小胞体ストレスがアポトーシスのみでなく非アポトーシス細胞死であるネクロプトーシス(制御されたネクローシス)も誘導することが明らかになった。また、内耳感覚細胞における小胞体ストレスによる細胞死とオートファジーの関連性をオートファジーの機能障害のある内耳培養細胞を用いて解析した。オートファジーの機能障害のある内耳培養細胞において小胞体ストレスに対する脆弱性を示すことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
Atg7以外のオートファジー関連遺伝子をノックダウンした細胞を作成し、これらの細胞においても小胞体ストレスを負荷し、細胞生存率の測定やフローサイトメトリー解析、透過型電子顕微鏡による形態観察、タンパク質の発現解析を実施することにより、内耳感覚細胞におけるオートファジーと細胞死のクロストークを標的としたシグナル伝達経路の分子メカニズムの解析、検討を進める。また、オートファジー誘導剤で処理した細胞においても細胞生存率の測定、透過型電子顕微鏡による形態観察やタンパク質の発現解析、検討を行う。
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Causes of Carryover |
現在までの研究が順調に進んでいるため当初の予定額よりも少額の支出に留まった。次年度以降は、より多くの条件設定を追加し、様々な病態を想定して実験を進める。小胞体ストレス誘導剤、オートファジー関連遺伝子タンパク質およびオートファジーマーカー、小胞体ストレスマーカー、アポトーシスマーカーを標的とした抗体試薬およびノックダウン処理に必要なsiRNA、リポフェクション試薬、オートファジー誘導剤などの試薬、タンパク質発現解析を実施するためのウエスタンブロット解析試薬の購入の費用に用いる。細胞培養に必要な培養液などの購入に費用を用いる。電子顕微鏡写真撮影委託費の経費として用いる。また、本研究の成果を学会で示すための学会旅費経費および論文投稿の経費として用いる。
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