2019 Fiscal Year Research-status Report
地域住民を対象とした難聴関連遺伝子変異の疫学調査および早期対応の手法の確立
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19K18756
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
後藤 真一 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10833577)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一般住民 / 遺伝学的検査 / 疫学調査 / ミトコンドリア遺伝子 / 遺伝カウンセリング |
Outline of Annual Research Achievements |
2014-2016年の予備研究において、多人数の一般住民に対する純音聴力検査および遺伝学的検査を行った。遺伝学的検査はミトコンドリア1555A>G、1494C>T変異に着目し、Taqman法により解析を行った。ミトコンドリア1555A>G、1494C>T変異はいずれもアミノグリコシド系抗生剤を使用することで難聴を惹起する原因遺伝子としてい知られている。 1、1683人に対して遺伝学的検査を行った結果、ミトコンドリア1555A>G変異を有する被検者を1人同定した。1494C>T変異を有する被検者は同定できなかった。 2、ミトコンドリア1555A>G変異を同定された被検者は69歳の男性であり、15歳のころより両側難聴を自覚していた。聴力像としては両側高音前傾型の難聴像を呈していた。アミノグリコシド系抗生剤の投与歴や騒音暴露歴は認めなかった。また、被検者の姉も同様に若年のころから難聴を自覚していたことが判明した。変異が同定された患者およびその家族に対して遺伝カウンセリングを行い、遺伝様式、およびアミノグリコシド系抗生剤の使用を禁止する薬物カードを配布した。これにより今後の難聴の進行及びご家族への難聴の出現を予防できた。 3、ミトコンドリア1555 A> G変異の有病率は0.08%-0.7%であると報告されている。今回の疫学調査では、1683人中1人に変位がが確認され、0.06%であった。過去の報告と比較して低い値であるが、サンプル数が少ないこと、限られた地区の地域住民を対象としたことが要因と考えられる。 今後もデータも加え対象を増やし検討を進めていく。また、他の難聴の原因となりうる遺伝子変異の有病率及び聴力像についても検討を勧める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミトコンドリア1555A>Gおよび1494C>T変異についての検討は済んでいるが英文発表の準備も行っており時間を要している状況である。次年度に学会発表と論文作成は行える予定ではある。また、ミトコンドリア遺伝子以外の難聴の原因となりうる遺伝子の検討および解析を今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き毎年の健診に参加しデータの蓄積を行う。 聴力へ影響を与える遺伝子についての網羅的な解析を行い、変異を有する被検者の割合及び聴力像の検討を行う。また、遺伝学的検査の結果に基づき必要な被検者に対して遺伝カウンセリングも行っていく。
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Causes of Carryover |
2019年度は大規模健診の期間が短くその分人件費に取られる費用が少なかった。2020年度は2019年度より大規模健診の期間が長くなる予定であるためその分費用が増加する予想である。また、論文や解析に関してもまだ途中であり、それらの投稿や校正にかかる費用も少なかったことが原因と考えられる。次年度に回った分の費用は2020年度の健診にかかる人件費や論文の投稿や校正費に充てたいと考えている。
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