2020 Fiscal Year Research-status Report
地域住民を対象とした難聴関連遺伝子変異の疫学調査および早期対応の手法の確立
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19K18756
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
後藤 真一 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10833577)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 一般住民 / 遺伝学的検査 / 疫学調査 / ミトコンドリア遺伝子 / 加齢性難聴 / ハプログループ / ROS |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年の予備研究において、多人数の一般住民に対する純音聴力検査および遺伝学的検査を行った。加齢性難聴は酸化ストレスにより産生された過剰な活性酸素腫(ROS)がミトコンドリアに影響を与えることで促進されると推定されている。遺伝学的検査ではミトコンドリアDNAの解析を行い、特定のDNA多型を持つ遺伝的集団を区分するハプログループの解析を行った。同じハプロタイプの集団は遺伝的にも同じような形質を持つといわれている。ハプログループはA, B4, B5, D4a, D4b, D5,F, G1, G2, M7a, M7b, N9に分類される。今回は特定のハプログループと加齢性難聴との関係性について調査を行った。 1、加齢性難聴との関連性を評価するため、30歳から64歳を対象とし、698人に対して純音聴力検査及び遺伝学的検査を行った。女性でχ二乗検定を行ったところ、難聴群でハプログループM7bの被検者が有意に多く、難聴を有していない対象群でハプログループM9の被検者が有意に多かった。男性ではχ二乗検定で有意さを認めるグループは存在しなかった。 2、同様の検定を多重比較検定であるロジスティック回帰分析で行ったところ男性のハプログループAが有意に難聴をきたしやすい結果となった。女性ではハプログループN9が有意に難聴になりにくいという結果となった。 3、ハプログループAは細胞内のROSレベルを上昇させアテローム血栓性脳梗塞の罹患リスクを上昇させると報告されている。またハプログループN9はROSの漏出をしにくい構造を作ることで代謝性疾患である2型糖尿病や心筋梗塞の発症リスクを抑えると報告されている。いずれも本検討を支持する内容となっている。 4、今後もデータも加え対象を増やし検討を進めていく。また、他の難聴の原因となりうる遺伝子変異の有病率及び聴力像についても検討を勧める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミトコンドリアハプログループと加齢性難聴についての検討は済んでいるが英文発表の準備も行っており時間を要している状況である。本年度に学会発表と論文作成は行える予定ではある。また、ミトコンドリア遺伝子以外の難聴の原因となりうる遺伝子の検討および解析を今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き毎年の健診に参加しデータの蓄積を行う。聴力へ影響を与える遺伝子についての網羅的な解析を行い、変異を有する被検者の割合及び聴力像の検討を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度は大規模健診が中止となったため、人件費や調査費用に取られる費用が無かった。2021年度は大規模健診が開催される予定であるため、その分費用が増加する予想である。また、論文や解析に関してもまだ途中であり、それらの投稿や校正にかかる費用も少なかったことが原因と考えられる。次年度に回った分の費用は2021年度の健診にかかる人件費や論文の投稿・校正費に充てたいと考えている。
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