2019 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌の発生を抑制する遺伝子(脱リン酸化酵素)の同定と機能解析
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19K18757
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒沢 是之 東北大学, 大学病院, 助教 (10770349)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脱リン酸化酵素 / PP6 / がん抑制遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、これまでに、遺伝子改変マウスを用いて、脱リン酸化酵素PP6の触媒サブユニット(Ppp6c)が、がんの抑制遺伝子である事を、以下の2編の論文により世界で初めて証明してきた。まず、ケラチノサイト特異的にPpp6cを欠損させたマウスでは、紫外線照射で皮膚扁平上皮がんが発生し、その組織ではPpp6c欠損と変異型p53が共存した。論文1 *Kato H, *Kurosawa K et al. (*加藤,*黒沢、共筆頭著者) Cancer Lett. 2015 次に、ケラチノサイト特異的に2重変異(Ppp6c欠損と変異型K-ras)をもつマウスは、変異型K-rasのみをもつマウスに較べて、著しく腫瘍化が促進されることを見出した。論文2 Kurosawa K, et al. Cancer Sci. 2018 がんゲノムデータベースでは、患者組織においてPpp6cの機能喪失型変異と、p53やRASの遺伝子変異の共存が認められる。我々の発見と合わせると、PP6の機能不全が、p53やRAS遺伝子の腫瘍形成能に“相乗的”に働くことが示唆される。 本研究では、上記の知見に基づき、頭頸部腫瘍の中で、舌がんに焦点を当てて研究を行う。タモキシフェンにより、2重(Ppp6c欠損+変異型K-ras、あるいはPpp6c欠損+変異型p53)、あるいは3重変異(Ppp6c欠損+変異型K-ras+変異型p53)を誘導可能なマウスを作製して、舌がんおける、PP6の機能不全の“相乗的”作用による発がん機構を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異型RASや変異型p53によるマウス舌がん発生へのPpp6c遺伝子欠損の影響を解析するために、下記の3種類のマウスの作製に成功した。用いるマウスは、①舌で2重変異(変異型KrasとPpp6c欠損)をおこすマウスK14-Cre(TAM);Kras(LSL-G12D/+);Ppp6c(flox/flox) 、②舌で3重変異(変異型Krasとp53欠損とPpp6c欠損)をおこすマウスK14-CreTAM; Kras(LSL-G12D/+);p53(flox/flox); Ppp6c(flox/flox)である。これらマウスの舌にタモキシフェンを投与することにより、それぞれ、コントロールのPpp6c(+/+)より、腫瘍の発生が著しく促進されることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の結果が得られると同時に、課題も見えた、サイトケラチン14 でCREをドライブすると、舌に塗布しても、舌以外に口唇の腫瘍形成が著しいため、死亡の原因が口唇の腫瘍によるのか、舌腫瘍のためなのかが区別できなかった。それを解決するために、K14-Cre(TAM)のかわりに、ROSA-Cre(TAM)により舌腫瘍を作製する系に切り替えた。この場合でも、舌においてPpp6c欠損させると、2重変異(変異型KrasとPpp6c欠損)または、3重変異(変異型Krasとp53欠損とPpp6c欠損)において、そのコントロールPpp6c(+/+)より、腫瘍の発生が著しく促進された。今後は、それら2重変異または、3重変異にで発生した腫瘍において、Ppp6欠損による影響を、リン酸化タンパクアレイによる標的タンパクのスクリーニングと、トランスクリプトーム解析により明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
次年度は、トランスクリプトーム(約150万円)を予定しており、前年度の研究費の一部を合算して用いる。
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