2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K18775
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
近藤 俊輔 琉球大学, 病院, 医員 (90596363)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / 頭頚部癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔咽頭癌の罹患率はHPV関連癌の増加に伴い、年々増加傾向にある.分子標的薬や免疫チェックポイント薬を中心とした新規の薬物療法の開発に伴い、予後の改善が期待されるが、いまだに口腔咽頭癌の5年生存率は60%前後である.加療後に完全奏功の評価となった症例においても再発が多く見られる。この様な再発や転移の要因として注目されているのが癌幹細胞である.白血病等の血液腫瘍分野では癌幹細胞の研究は進展しており、既に癌幹細胞の生着に必要な分子の同定などめざましい進展を遂げている.しかし現時点では頭頸部癌の分野ではまだ十分な癌幹細胞研究の進展は見られておらず、治療に繋がる頸部癌幹細胞をター ゲットにした特異的分子は同定されていない.このことから、申請者は頭頸部癌幹細胞に発現するマーカー、特異的分子を同定し、将来的に癌幹細胞をターゲットにした治療の開発へ繋がることを目的とし本研究を計画した. その為、2019年度および2020年度は頭頸部癌において現時点で癌幹細胞のマーカーとして報告されているCD44陽性かつALDH1陽性細胞(CD44+/ALDH1+)の癌細胞に占める割合を過去の手術や生検にて採取されている癌組織で検討した.癌組織切片を用いてCD44およびALDH1の蛍光二重免疫染色を行ない、蛍光顕微鏡を使用し、CD44+/ALDH1+の細胞数を評価した.そして現在下咽頭癌細胞中のCD44+/ALDH1+細胞の割合を数値化するとともに、CD44+/ALDH1+細胞の割合と予後の関連を統計学的に検討を行っている.この結果によりまずは頭頚部癌においてもCD44、ALDH1が癌幹細胞マーカーとして特異的分子の候補となるかを評価.さらにPDL1の検討を追加しておりPDL1陽性の条件を追加することでより特異性が高まるかを検討する予定.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は頭頸部癌において現時点で癌幹細胞のマーカーとして報告されているCD44陽性かつALDH1陽性細胞(CD44+/ALDH1+)の癌細胞に占める割合を過去の手術や生検にて採取されている癌組織で検討した.概ね初年度の予定通りであったが、本年度は当初の計画になかったPDL-1の評価も癌幹細胞評価の指標に加えたため、研究および解析を新たに追加したため当初の予定よりやや遅れている状況となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後CD44+/ALDH1+/PDL1+細胞集団を集め、さらにスフィア形成法およびSlide population法を用い幹細胞の特徴を持った細胞集団を分離する.スフィア形成法は、接着細胞を浮遊状態で培養すると、幹細胞が細胞塊を形成することから、細胞塊を回収することで幹細胞性の細胞集団を集めることができる方法である.一方、slide population法とは、細胞にDNA蛍光色素であるHoechst 33342 色素を取り込ませて紫外線レーザーを照射すると多数の細胞は強い蛍光を発することが知られるが、幹細胞はABC トランスポーターを強発現することから、色素を排泄するため細胞は弱い蛍光しか発しない.このため、弱蛍光の細胞を集めることで、幹細胞を効率よく集めることができる.これら2つの方法で癌幹細胞を集め、マウスに移植し、腫瘍増殖性が見られる細胞群を絞りこむ.それと平行してこの細胞群を次世代シーケンサーでトランスクリプトーム解析し、より幹細胞性の高い新しい因子(新規頭頸部癌幹細胞マーカー)を同定する.次世代シーケンサーは当 教室ではこれまでに難聴遺伝子の解析で多くの使用経験があり解析もできる状態にある.さらに、培養条件下でRNA干渉法を用い新規頭頸部癌幹細胞マーカー遺伝子をknock downしたときに癌幹細胞の特性が失われるのか確認する.最終的にこの新規頭頸部癌幹細胞マーカーの抗体を使って、下咽頭癌組織切片で免疫染色を行い、有用性についても検討する.抗体は、市販されている場合は購入し、市販されていない場合はウサギで抗体を作製する.当教室ではウサギを用いて抗体作製のノウハウがあり、それを用いる.
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Causes of Carryover |
当初2年目で予定していた新たな実験経路および動物実験が3年目に延期になったため2年目で使用予定の予算に大きな減額が生じた。一方次年度には2年前で使用予定であった経費までかかるため、3年目へと繰り越しとなった.
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