2019 Fiscal Year Research-status Report
CD8陽性Tfh細胞が関わる慢性炎症性疾患の病態メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K18776
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
村山 公介 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20825418)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | IgG4関連疾患 / IgG4関連涙腺・唾液腺炎 / 濾胞ヘルパーT細胞 / CD8 / 慢性炎症 / 扁桃 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、IgG4関連疾患の顎下腺病変に多数存在する、CD8陽性濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の機能を解析し、同疾患の局所病変形成のメカニズムを解明することである。現時点での研究実績を以下に列挙する。 ①IgG4関連涙腺・唾液腺炎(IgG4-DS)患者の顎下腺組織からTfh細胞を単離し、マイクロアレイで遺伝子発現を解析した結果、CD8やグランザイムなどの細胞傷害性T細胞(CTL)関連分子が高発現していることを発見し、RT-PCR・フローサイトメトリー(FCM)でCD8陽性Tfh細胞の存在を検証した。 ②IgG4-DS患者の顎下腺組織は検体量に限りがあり、同組織のみではCD8陽性Tfh細胞に関する十分な検討が困難であった。しかし扁桃組織の網羅的な解析の結果、CD8陽性Tfh細胞が一部の小児扁桃にも比較的多数存在していることを新たに発見した。 ③小児扁桃のCD8陽性Tfh細胞およびCD8陰性Tfh細胞を単離しマイクロアレイ・RT-PCR・FCMで解析した結果、IgG4-DS患者顎下腺のCD8陽性Tfh細胞と同様に、CD8陽性Tfh細胞でもCTL関連分子を高発現していることが確認された。 ④小児扁桃のCD8陽性Tfh細胞とCD8陰性Tfh細胞をそれぞれB細胞と共培養し、培養上清中のIgGをELISA法で定量したところ、CD8陰性Tfh細胞と比較してCD8陽性Tfh細胞の共培養上清でIgGの有意な増加を認めた。また同上清中のグランザイムAをELISA法で定量したところ、CD8陽性Tfh細胞を加えた培養上清でグランザイムAの分泌が確認された。 ⑤IgG4-DS患者顎下腺と小児扁桃それぞれのCD8陽性Tfh細胞を単離しマイクロアレイで比較したところ、MUC4,CCL19,MHC-IIなどの遺伝子発現がIgG4-DS患者顎下腺のCD8陽性Tfh細胞で有意に高発現していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、IgG4関連疾患の診断目的で生検した顎下腺組織と手術で摘出した口蓋扁桃組織を主に使用している。検体が安定して供給されるかが本研究の進捗で最も重要なポイントとなるが、当研究室は札幌医科大学附属病院耳鼻咽喉科および5か所の共同研究施設の耳鼻咽喉科から臨床検体提供を受けているため、現在まで着実に研究を進めることができている。また、本研究では主にFACSを使用して細胞の機能解析および単離を行っているが、本学の教育機器センターには大型機器(FACS Canto、FACS Ariaなど)が複数配備されているため、大型機器のトラブルなどで実験が中断されるリスクが比較的低いことも計画通りに進行している要因であると考えられる。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、不要不急の耳鼻咽喉領域の手術について中止や延期が余儀なくされているため、流行の収束までは十分な臨床検体が得られない可能性が高いため、今後の研究の進捗は今までよりも遅れてしまう懸念がある。
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Strategy for Future Research Activity |
小児扁桃のCD8陽性Tfh細胞とB細胞の共培養実験の結果から、CD8陽性Tfh細胞はCD8陰性Tfh細胞と比較して、より強力な抗体産生誘導能を有していることが示唆されたが、現在のところ抗体産生誘導能が高いメカニズムが不明であるため、共培養実験の実験条件を追加して検討したいと考えている。現在候補となっているのはTfh細胞に関連するサイトカインのIL-21、IL-4、IL-10などであるが、その他の表面抗原・サイトカイン・ケモカイン・転写因子などについても適宜検討を行う。 また、共培養実験の結果からCD8陽性Tfh細胞は細胞傷害顆粒を分泌していることが明らかとなったが、細胞傷害のターゲットについては現時点で明らかとなっていない。今後、共培養する条件および細胞種を変更しさらなる検討を行う予定である。ただし同一検体中のCD8陽性Tfh細胞とCTLのCD8の発現を平均蛍光強度(MFI)で比較すると、CD8陽性Tfh細胞のCD8発現はCTLの20%~30%程度であることから、細胞傷害能の有無については注意深く評価することが必要であると考えている。 IgG4-DS患者顎下腺のCD8陽性Tfh細胞と健常者扁桃組織のCD8陽性Tfh細胞の違いについてもさらに検討を行いたいと考えている。現時点ではマイクロアレイ結果のRT-PCRおよびフローサイトメトリーによる検証が出来ていないため、サンプルが揃い次第検証を行う。
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Research Products
(1 results)