2019 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺上皮におけるGBP-1の癌細胞動態への影響の解明
Project/Area Number |
19K18777
|
Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
宮田 遼 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00610875)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ヒト唾液腺上皮細胞 / GBP-1 / タイト結合 / 上皮バリア / 炎症性サイトカイン / IgG4関連疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
hTERT処理したヒト正常唾液腺由来の唾液腺腺管上皮培養細胞を用いた。IFNγ処置にて、GBP-1およびタイト結合分子claudin-7, LSRの発現増加と、上皮バリア機能の亢進を認めた。GBP-1のsiRNAの投与で、INFγによるclaudin-7, LSRの発現増加は抑制され、上皮バリア機能亢進を抑制した。GBP-1のknock downにより、claudin-7とoccludinの細胞質内へのendocytosisが見られた。IL-1βとTNF-αそれぞれの処置により、IFNγ処置と同様のGBP-1, claudin-7, LSRの発現亢進が見られ、バリア機能亢進がみられた。これらの変化はGBP-1のknock downにより抑制された。 IgG4関連疾患においてTh2サイトカインIL-33の関与が知られており、TSLPとIL-33を処置したが、GBP-1や上皮バリアに影響を与えなかった。 GBP-1や上皮バリア亢進のシグナル伝達経路を調べるため、PKCα, PKCδ, NF-κB, p38/MAPK, JNKのinhibitorを処置すると、PKCα inhibitorがGBP-1, claudin-7, LSRを増加させていた。また、IgG4関連疾患患者の唾液腺組織において、GBP-1, claudin-7, LSRの高発現を認めた。 以上より、ヒト唾液腺管上皮細胞において、GBP-1およびタイト結合分子claudin-7, LSRは、バリア機能の維持に関与している。GBP-1がヒト唾液腺管上皮細胞においてタイト結合に局在し、MLCKを介してタイト結合分子の安定を維持している。PKCα inhibitorがヒト唾液腺管上皮細胞の上皮バリア機能をGBP-1を介して誘導しており、GBP-1がPKCαシグナル経路を介してタイト結合を制御している、と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滞りなく実験を行えたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに確立している唾液腺腺管上皮細胞の培養系を用いて、手術で得られたヒト検体から、唾液腺癌上皮細胞の培養を行う。これまでに行った検討を同様に行い、正常唾液腺腺管上皮細胞で得られたデータと比較検討する。さらに各種シグナル伝達阻害剤を用いて、どのような細胞内シグナル経路がGBP-1の発現に関与しているのか同定していく。 唾液腺癌は比較的稀であり、充分な検体量が得られない可能性もある。そこで、ヒト唾液腺癌由来細胞株であるA-253およびWR21株を用意している。前述と同様の検討を行い、正常唾液腺腺管上皮細胞とのデータを比較していく。 本研究で得られた知見を元に、将来的にはマウス等の動物実験に繋げ、これまで治療法の選択肢がほとんどなかった唾液腺癌の切除不能例や遠隔転移症例に対する新規治療法に繋がる基礎的知見を得たい。
|