2022 Fiscal Year Annual Research Report
バイオインフォマティクスアプローチによる後天性中耳真珠腫シグナル伝達機構の解析
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19K18790
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福田 篤 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (70609742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 耳鼻咽喉科学 / 後天性中耳真珠腫 / Notch1 / HES1 |
Outline of Annual Research Achievements |
後天性中耳真珠腫は、角化扁平上皮の異常増殖により側頭骨中耳に生じる境界明瞭な非腫瘍性病変である。局所浸潤性があり、頭蓋内に進展した場合は合併症により死亡する可能性がある。発症原因は未だ明確にされておらず、依然として根本的治療は外科的治療のみである。当研究では真珠腫における増殖・骨溶解シグ ナル伝達機構についてゲノム・プロテオーム解析を軸にして網羅的に解析し、増殖・骨溶解シグナル伝達およびそのシグナル伝達系相互のクロストークに関連した分子群を同定する。さらに、真珠腫発症・増殖・骨溶解メカニズムを分子生物学的側面から解明し、分子標的治療法開発の基盤を確立する。本研究で、真珠腫の病態生 理に関わる新たな標的分子、シグナル伝達機構を解明することができれば、今後の真珠腫治療におけるbreak throughとなり、真珠腫の非外科的治療法開発へ大 きな一歩となることが期待される。また、臨床的側面との関連性も検討することで、組織破壊性との関連や、外科的治療後の再発リスク因子の同定も可能となる。 令和4年度はこれまでに得られたデータを元に海外での学会発表を行なった。 研究期間全体を通じて、後天性中耳真珠腫の病態生理にNotchシグナル伝達経路が関与している可能性が明らかとなった。Notchは1回膜貫通型受容体でNotchを介した伝達系はNotchシグナルと呼ばれている。Notch受容体がリガンドによって活性化されると、Notch受容体の細胞内ドメインが核内に移動して転写因子複合体を形成し、HES1 (Hairy and enhancer of Split-1)などの標的遺伝子の転写を開始する。後天性中耳真珠腫においてはNotch1とHES1の発現低下がみられており、これらが細胞の分化から増殖へとバランスを変化させ、病的状態の原因をもたらしている可能性がある。しかし、Notch1の発現低下を誘発する機序は不明であり、さらなる研究が望まれる。
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Research Products
(1 results)