2019 Fiscal Year Research-status Report
鼻腔NOに着目した好酸球性副鼻腔炎の病態解明と新規治療への応用
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19K18801
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
吉田 加奈子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (00773706)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 好酸球性副鼻腔炎 / 鼻腔一酸化窒素(NO) / 鼻茸 / LRP-1 / 内臓脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
好酸球性副鼻腔炎の病態解明と、バイオマーカーの確立、治療への応用を目的とし本研究を進めている。 申請者は今年度、好酸球性副鼻腔炎患者で術前鼻腔NO値が有意に低いことを見出した。また、鼻腔NO値は好酸球性炎症を反映することも確認した。さらに、非好酸球性副鼻腔炎患者では、術後1年で鼻腔NO値の有意な上昇を認めるが、好酸球性副鼻腔炎患者では、術後1年経過しても鼻腔NO値の有意な上昇を認めないことがわかった。加えて、術後に鼻茸再発を認める患者は、再発を認めない患者と比較して、術後の鼻腔NO値が有意に低いことも確認した。したがって、鼻腔NO値は好酸球性副鼻腔炎の病勢を反映し再発を予測するマーカーと成り、鼻腔NO値が低いことが好酸球性副鼻腔炎の病態形成に関与すると考えられた。これらの研究成果は、第120回日本耳鼻咽喉科学会総会で発表した。 鼻副鼻腔におけるNO産生は、LRP-1(Low density lipoprotein receptor-related protein-1)細胞膜受容体を介する経路と内臓脂肪組織が産生するアディポサイトカインを介する経路の2つから成ると推測している。申請者は今年度、好酸球性副鼻腔炎では非好酸球性副鼻腔炎と比較し鼻粘膜上皮におけるLRP-1の発現が低下していることを免疫組織化学、real time PCRで確認した。さらに、Th2サイトカインの刺激により気道上皮細胞(NHBE)におけるLRP-1の発現が低下することを見出した。このことは、好酸球性副鼻腔炎における鼻腔NO産生低下に関与すると考えられ、今後さらなる検討が必要である。また、鼻・副鼻腔手術を受けた患者の内臓脂肪面積を測定し、好酸球性副鼻腔炎の重症度との関係、鼻腔NO値との関係を現在検討中である。nがまだ少ないが、好酸球性副鼻腔炎患者において内臓脂肪面積が大きい傾向がありそうである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、好酸球性副鼻腔炎患者において鼻腔NO値が低いこと、好酸球性副鼻腔炎患者では鼻・副鼻腔におけるNO産生が抑制されていること、また鼻腔NO値が低く維持される患者では、鼻茸の再発が起こりやすいことを見出し、好酸球性副鼻腔炎の病態における鼻腔NOの重要性を明らかにした。さらに、鼻腔NO産生に関与するLRP-1の発現が好酸球性副鼻腔炎では低いこと、LRP-1の発現はTh2サイトカイン刺激により抑制されることを確認した。 鼻腔NO産生には、内臓脂肪組織が産生するアディポサイトカインの関与も知られるため、当科で手術を行う慢性副鼻腔炎患者の内臓脂肪面積測定と血液、鼻茸組織サンプル採取、鼻腔NO値の測定、各種臨床データの採取と解析を進めている。しかし、現在コロナウイルスの影響により鼻・副鼻腔疾患に対する手術件数を制限せざるを得ない状況であるため、当初予定した症例数の2/5程しか達成できていない。それに伴い、手術摘出組織や血清を用いたアディポサイトカイン測定などの実験が遅延してしまっている状況である。 以上より本研究課題の推進状況はやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
好酸球性副鼻腔炎の更なる病態解明とバイオマーカーの確立を目指す。 ①当科で手術を行う慢性副鼻腔炎患者の内臓脂肪面積測定と血液、鼻茸組織サンプル採取、鼻腔NO値の測定、各種臨床データの採取を引き続き進め、症例数を増やす。 ②①で得られたデータを解析し、内臓脂肪と好酸球性副鼻腔炎の病態との関係を検討する。 ③①で得られた血液、鼻茸組織サンプルを用いてアディポサイトカイン(Leptin, Vifantin, TNFα, PAI-1, MCP-1, アディポネクチン)、NO代謝物、Th2サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13)をreal-time PCR、ELISAで測定し、好酸球性副鼻腔炎の病態と関係の深い因子を同定する。 ④鼻茸組織から樹立した鼻粘膜上皮細胞株を用いて、③で同定した因子の機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画を遂行するために必要な、内臓脂肪面積測定機器や様々な試薬の購入に研究費を使用した。また、研究成果を発表するための国内旅費が必要であり、研究費を使用した。研究を進めていく上で本年度使用額は適切であったと考える。次年度研究に向けて残額を繰り越し使用することが望ましいと考えられた。従って次年度使用額が生じた。 本研究では、手術患者の内臓脂肪面積測定や臨床データを取得すること、手術によって摘出した鼻粘膜組織を用いてRNAや蛋白測定を行うこと、手術で摘出した鼻粘膜組織から鼻粘膜細胞株を樹立しvitro実験を行うことを主体としている。それらに必要な消耗品やELISA、PCRに必要な試薬、細胞培養に必要な培養液の購入に研究費を使用する予定である。また、研究成果を英語論文にまとめるとともに、日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会、日本鼻科学会、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会、国際学会などで発表することで社会への発信を予定しており、研究費の使用を計画している。
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[Journal Article] Increased expression of L-plastin in nasal polyp of patients with nonsteroidal anti-inflammatory drug-exacerbated respiratory disease.2019
Author(s)
Takabayashi T, Tanaka Y, Susuki D, Yoshida K, Tomita K, Sakashita M, Imoto Y, Kato Y, Narita N, Nakayama T, Haruna S, Schleimer RP、Fujieda S
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Journal Title
Allergy
Volume: 74(7)
Pages: 1307-1316
DOI
Peer Reviewed
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