2019 Fiscal Year Research-status Report
患者由来iPS細胞を用いたEYA4遺伝子変異難聴の病態の解明
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19K18816
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松崎 佐栄子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (70573400)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EYA4 / ヒト疾患由来iPS細胞 / 遺伝性難聴 / 感音難聴 / 進行性難聴 / 常染色体優性遺伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年は、当研究室で確立した内耳細胞誘導法を用いてEYA4遺伝子変異患者4症例および健常者の血液検体からiPS細胞を樹立し、内耳細胞に誘導した。EYA4遺伝子から産生されるEYA4タンパクが、細胞内においてどのような機能を担っているかは未だ解明されていない部分が多く、まずは内耳細胞におけるEYA4の発現部位を検討することで本疾患の病態を解明する手がかりを得られないかと考えた。EYA4遺伝子変異患者由来、および健常者由来内耳細胞におけるEYA4タンパク発現の症例ごとの相違を検討したところ、健常者由来の内耳細胞では核にのみEYA4の発現が見られたのに対し、患者由来内耳細胞においては細胞質においてもEYA4の発現が高率で見られ、核におけるEYA4の発現も健常者由来内耳細胞よりも強いという傾向が見られた。また、iPS細胞を樹立したEYA4遺伝子変異難聴の4症例は、数年に渡って聴力を観察している。内耳細胞におけるEYA4タンパクの発現パターンと実際の症例の聴力および難聴の発症年齢を比較したところ、概ね正の相関が見られた(第120回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演会にて発表)。また、各種の細胞ストレス物質を内耳細胞の培養上清に添加することで細胞ストレスを与え、細胞の生存率について検討を行った。その結果、特に酸化ストレスに対する脆弱性を認めた(第29回日本耳科学会総会・学術講演会ヤングアワードセッションにて発表)。今後は薬剤スクリーニングを予定しているが、今年度に得られた結果をもとに、抗酸化作用を持つ薬剤を中心に投与を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内耳細胞内におけるEYA4タンパク発現部位の検討および薬剤スクリーニングにむけた各種細胞ストレス物質に対する脆弱性の検討を順調に行っている。次年度は本疾患の病態を改善させる薬剤を検索する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS細胞を用いた実験系では一般的に、1症例あたり3ラインについて検討を行うことで得られた結果の再現性を見るため、必要なライン数に達するまで上記の検討を継続する。また、本疾患の病態を改善させると予測される薬剤を数十種選び、iPS細胞由来内耳細胞に添加する至適濃度についての検討を開始する。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んでいるが、物品、試薬の購入金額や学会参加が予想より少なかったことから次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)