2020 Fiscal Year Research-status Report
網膜に対するメカニカルストレスの分子生物学的機構の解明
Project/Area Number |
19K18844
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
塩出 雄亮 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20711097)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ミュラー細胞 / 網膜色素上皮細胞 / 細胞伸展刺激 / サイトカイン刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
病的近視、黄斑上膜、網膜色素上皮剥離、増殖硝子体網膜症などの網膜疾患は、その発症に網膜へのメカニカルストレスが関与していると考えられる。網膜を構成する細胞のうち、ミュラー細胞と網膜色素上皮細胞は、各種因子を発現し網膜神経細胞に様々な影響を与えることが知られており、これらの細胞とメカニカルストレスの影響を検討することが重要であると考えられる。 これまでのところ、ヒトRPE細胞株であるARPE19細胞では特定のサイトカインによる刺激を行うことで細胞の形態変化(pile up)が認められ、上皮間葉転換が促進される可能性があることを報告した(Matoba, Shiode et al. PLOS ONE, 2017)。我々はサイトカイン刺激のみならず、細胞伸展刺激もまた、ミュラー細胞あるいは網膜色素上皮細胞の上皮間葉転換等に影響を与えるのではないかと考えた。 実験細胞としてはヒトミュラー細胞株であるMIO-M1細胞、ヒト網膜色素上皮細胞に近い、pRPE細胞およびiPS-RPEを選択した。これらの細胞を適切な方法により培養し、安定して使用することが可能となった。メカニカルストレスを再現するにあたり、細胞伸展刺激(我々が独自で開発したシリコンチャンバーを用いた刺激装置を用いる)を行った。 pRPE細胞においては、サイトカイン(TGF-β2、TNF-α等)単独刺激、あるいはサイトカイン刺激と細胞伸展による共刺激により、pRPE細胞形態の変化(pile up)が認められるようである。細胞伸展刺激が網膜色素上皮細胞の上皮間葉転換に影響を及ぼす可能性があると考えられる。今後、各種細胞(pRPE, MIO-M1, iPS-RPE)において、伸展刺激方法を適宜変更し、どのような因子が発現されるのかRT-PCR、ウエスタンブロット法、免疫染色等による検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞(MIO-M1、pRPE、およびiPS-RPE)の培養を行い、安定して実験に使用することが可能になった。これらの細胞を用いて培養細胞伸展装置による細胞伸展刺激を行っている。 ミュラー細胞株であるMIO-M1では特定の条件下での伸展刺激により、転写因子の一つであるc-Fosの遺伝子発現の亢進がRT-PCRにより確認できた。c-Fosは神経活動マーカーとして知られており、今後網膜神経細胞に対してどのような影響を及ぼすか検討を行う。その他の因子(FGF2, GFAP)についても、RT-PCR、ウエスタンブロット、免疫染色により検討を行う予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞刺激の種類(伸張,圧迫,ずり応力など)や伸展強度,伸展方法(周期的伸展あるい は静的伸展)、刺激持続時間、ストレスをかける機器を変更し、細胞の上皮間葉転換が促進されるかどうかを検討する。各種サイトカインによる共刺激の影響も検討する。上皮間葉転換の促進が認められた場合には、発現亢進した因子のメカノトランスダクションの解明を進めていく。 メカニカルストレスのモデル動物眼に対する 実験として、マウス、ラット眼を用いて、網膜への強い牽引により網膜剥離に至る増殖硝子体網膜症(PVR)のモデルを作成する。培養実験でみられた細胞の形 態、因子の発現が生体モデル眼においても同様にみられるかどうかを組織学的に検討していく。
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Causes of Carryover |
理由)使用するサイトカインや免疫染色に用いる抗体の購入費が当初の予定よりも少なく済んだため。また学会参加費、旅費が当初予定していたよりも少なかっ たため。 使用計画)各種網膜細胞の分子生物学的解析(細胞培養、細胞伸展装置、RT-PCR、ウエスタンブロット、免疫染色等)に用いる各種抗体、各種物品の購入に使用する。
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