2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K18854
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長田 秀斗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (50748770)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 網膜色素変性症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病や臓器機能不全に由来する代謝異常は、網膜の神経変性を引き起こすが、これらは不可逆的変化であり現状治療法はない。網膜は脂質を多量に含有し、形態や光受容体という機能の維持には特定の脂肪酸が必須であることが示唆されている。これら脂肪酸は食物由来であり、多くの臓器による代謝の過程を経て網膜に輸送されるが、肝臓や脂肪の疾患に端を発するような脂質代謝異常が網膜に与える影響には未だ不明な点が多い。本研究では全身の代謝異常に起因する網膜変性の発症機構に関して、組織間を仲介する遠隔メッセージ物質として脂質に着目し、全身性の代謝異常による網膜神経変性を脂質が仲介する機構を明らかにする。 全身に広く発現し、代謝制御に寄与するアディポネクチン1型受容体は機能阻害によって網膜色素変性症を呈することが知られているため、アディポネクチン1型受容体ノックアウトマウスの網膜および血清を用いてリピドミクス解析を行った。血清中の脂肪酸の顕著な変化は認めなかった。一方で網膜では視細胞外節の形成に重要なドコサヘキサエン酸(DHA)を含む脂質の著しい低下を認めた。また、視細胞内節において発現が認められる脂肪酸伸長酵素Elovl2の発現が低下していた。同時に、脂質合成に関与する多くの遺伝子群の発現が変化しており、アディポネクチン1型受容体ノックアウトマウス網膜における局所的な脂質動態の変化が示唆された。in vitroにおいてもアディポネクチン1型受容体機能阻害によってElovl2 mRNAの発現低下と脂質合成遺伝子群の発現上昇が認められた。したがって、網膜のアディポネクチン1型受容体は視細胞の機能と生存のために十分なDHAを供給するために必要と思われるElovl2の発現誘導に寄与しており、局所的な脂質代謝の変化によって網膜特異的な細胞変性を生じるというメカニズムが示唆された。
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Research Products
(3 results)