2020 Fiscal Year Research-status Report
ラマン散乱光解析を用いた悪性リンパ腫と加齢性変化の鑑別
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19K18873
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岩崎 優子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (10801516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / ラマン散乱光 / 加齢性変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度もドルーゼンモデルの作成を試みた。網膜色素上皮細胞を3か月で培養し、補体を含むヒト血清を添加する既報(Johnson, LV et al. 2011, Galloway, CA. et al. 2017)を採用した。細胞は、2019年度に購入、凍結した「iCell網膜色素上皮細胞」を使用。トランスウェルはメンブレンの自発蛍光が低く、ラマン散乱光のピークも比較的小さい、Millicell社のPICM01250を使用した。iCellのメーカープロトコル記載の培地(MEM、KSR、N2含有)を用いたところ、今回のメンブレン上では細胞の接着が不良であり、さらに培地を検討した。10%FBS含有F10培地と1型コラーゲンゲルで培養を開始し、その後DMEM、F12、B27含有培地で維持培養(Kamao, H. et al.2014)することで網膜色素上皮細胞をメンブレイン上でシート状に3か月培養することができた。 培養開始3か月後、補体を含むヒト血清を10%含む培地を用いて1週間培養し、ドルーゼンのマーカーとしてApoEの発現を比較した。ヒト血清の添加により、ApoEの発現が亢進することが確認された。網膜色素上皮細胞が基底側に分泌した4型コラーゲンと網膜色素上皮細胞の間にApoEは発現しており、ドルーゼンモデルとして矛盾しない分布であることも確認できた。 悪性リンパ腫細胞は、臨床では網膜色素上皮細胞の上下に存在する。網膜色素上皮細胞のシートの上から悪性リンパ腫細胞を添加しただけでは、悪性リンパ腫細胞は網膜色素上皮細胞の下には侵入しなかった。 3か月培養した網膜色素上皮細胞をラマン散乱光顕微鏡で観察したところ、532nmレーザーでは細胞の自家蛍光が強く、また785nmレーザーではS/N比が低く、メラニン由来と思われるラマン波形以外は詳細な評価が難しい状況だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドルーゼンモデルのプロトコルが、既報のままでは細胞の発育が難しかった。3か月という長期の培養を必要とするため、培養条件の検討に時間を要した。
また、ラマン散乱光の観察手法として想定していた、つくば市物質材料研究機構で使用できるラマン顕微鏡の撮影条件では、細胞自体の自家蛍光が問題となり、良好なラマン散乱光の観察が難しいことがわかり、2020年度に作成に成功したドルーゼンモデルから、ラマン散乱光の情報が効率よく得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
・ドルーゼンモデルはプロトコル確定。再度同じ条件で作成する。
・悪性リンパ腫に網膜色素上皮細胞共培養モデルは、単に色素上皮細胞上に悪性リンパ腫細胞を載せるだけでは困難であることが分かった。3か月培養する中途で、色素上皮細胞の下に悪性リンパ腫細胞を入れるなど、さらなる検討が必要であると考える。
・網膜色素上皮細胞のもつ自家蛍光に邪魔されずにラマン散乱光を評価するため、より長波長レーザーを搭載した機器の使用を検討する必要がある。
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Causes of Carryover |
ラマン散乱光顕微鏡による観察を試みた結果、予定していた機器と別の顕微鏡を今後検討する必要があることが判明した。そのため、本年度は予定よりもラマン散乱光顕微鏡の利用が減り、機器利用費が減少したため予算に余剰が生じた。次年度以降、使用する顕微鏡が決定し次第、あらためて機器利用費が必要となるため使用する計画である。
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