2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K18875
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
有村 尚悟 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (20835029)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 虹彩切除 / 白内障 / アスコルビン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障手術である線維柱帯切除術は、治療効果は高いが、術後の重大な合併症の一つとして白内障の進行がある。虹彩切除を伴う線維柱帯切除術では、新たな房水流出路において水晶体に向かう房水の流量が減少する。そのため、水晶体の透明性を保つために必要な代謝反応が減少し、水晶体混濁が進行すると我々は考えた。本研究では、白内障進行と深い関わりがあるといわれる酸化ストレスに着目し、虹彩切除後の前房水と白内障進行の生理的なメカニズムを解明することで、新たな白内障治療薬開発の足がかりや緑内障濾過手術における術式選択の新たな判断基準の創出を目指している。まず最初に、日本有色ウサギに対する虹彩切除手技を確立した。筋肉注射による全身麻酔下で日本白色ウサギの片眼、10眼に強角膜切開を行い、虹彩を脱出させた上、虹彩切除を行い、安定して虹彩切除が行うことが可能になった。もう片目は対照群とし強角膜切開まで行い、虹彩には切開を加えなかった。強角膜創は両群とも8-0 Nylon糸で縫合している。我々が以前行った報告から、虹彩切除後の炎症は術後約1か月程度で収束するものと考え、両群の術後1週間・1か月・3か月・6か月後における房水を採取し、速やかに保存している。比色・蛍光やプレートアッセイキットを用いて房水中の活性酸素種・抗酸化物質の濃度や活性を調べたところ、術後では持続的に前房内のアスコルビン酸が減少していることが分かった。またアスコルビン酸の減少では転写調節因子であるNrf2の核内移行が促進されるといわれており、水晶体上皮を免疫染色しているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究を申請した際の初年度までの目標は、日本有色ウサギに対する虹彩切除および、房水中の活性酸素種・抗酸化物質の濃度や活性を調べるための房水サンプル採取と解析である。次年度(現在)までの目標は虹彩切除後の水晶体上皮のアスコルビン酸取り込み能の測定である。虹彩切除に関しては手技が安定し、術後に目立った合併症もなく、検体採取可能である。房水採取はある程度終了し、房水の解析をおこなったところ、水溶性抗酸化物質であるアスコルビン酸が減少していることが分かった。アスコルビン酸の取り込み能に関しては、ナトリウム依存性ビタミンCtトランスポーター(SVCT-2)のウェスタンブロッティングを施行したが対象眼と比較して有意な差は無かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度:虹彩切除後の水晶体における遺伝子発現変化の検討 両群の術後1か月、3か月・半年(それぞれ虹彩切除群10眼、対象群10眼)における水晶体および対象眼の水晶体を摘出し、カプセルを剥離、上皮細胞を抽出し細胞のtotal RNAからDNAマイクロアレイを行い、水晶体上皮細胞における遺伝子発現の変化について検討する。本法が上手くいかない場合は大量の配列データが得られるシーケンサーを利用して、RNAシーケンス(RNA-Seq)を行なう。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は1円であり、使用費用の端数である。
|