2019 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集技術を用いたレーバー先天黒内障の病態解明
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19K18878
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
細川 海音 岡山大学, 大学病院, 助教 (00711053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レーバー先天黒内障 / KCNJ13遺伝子 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜ジストロフィは重篤な視力障害を来す眼疾患であり、現在有効な治療法はない。その一型であるレーバー先天黒内障16型(Leber’s congenital amaurosis type16 以下LCA-16)ではイオンチャネルKir7.1をコードするKCNJ13遺伝子に異常があり、KCNJ13遺伝子は眼の網膜色素上皮(以下RPE)細胞に多く発現していることが知られている。しかしKCNJ13遺伝子がRPEや網膜を含む眼球全体に及ぼす影響には不明な点が多い。そこで本研究ではゲノム編集技術を用いてLCA-16の病態を明らかにし、治療法開発の基盤となる研究を行う。 今年度はCRISPR-Cas9システムを用いて正常ヒト人工多能性幹細胞(以下iPS細胞)に遺伝子編集を行い、KCNJ13遺伝子欠損iPS細胞を作製し、RPE(以下KCNJ13 KO iPS-RPE)へと分化させることに成功した。得られたKCNJ13 KO iPS-RPE細胞を用いて形態解析、貪食能の解析を行った。形態解析では正常iPS-RPEは均一な単層配列を示すのに対し、KCNJ13 KO iPS-RPEは単層配列を示す部分に加え、一部で表面が突出した配列を示した。RPEの部分的突出配列は患者の表現型に類似した変化であり、免疫染色を行い突出部分の細胞の性状を解析した。突出部分はRPEのマーカーであるE-cadherinのシグナルが消失し、間葉系マーカーであるfibronectinで染色される部位を認めた。KCNJ13 KO iPS-RPEで観察される細胞突出は上皮間葉転換が原因の一つである可能性が示唆された。また、KCNJ13 KO iPS-RPEの貪食能は正常iPS-RPEと比較して低下していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR-Cas9システムを用いた正常ヒト人工多能性幹細胞(以下iPS細胞)に遺伝子編集によるKCNJ13遺伝子欠損iPS細胞の作製、RPE(以下KCNJ13 KO iPS-RPE)への分化に成功し、解析を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はKCNJ13 KO iPS-RPEの形態異常を引き起こす原因について遺伝子発現タンパク発現レベルでの詳細な検討、貪食に関わるシグナルの変化について詳細な解析を行っていきたい。また、並行してKcnj13遺伝子欠損マウスを作製し、in vivoでの検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
消耗品等が当初の見積もりよりも安かったので残額が出たが、当該予算については、次年度実施する検討や解析に必要な経費に充当する予定である。
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