2019 Fiscal Year Research-status Report
リソソーム膜タンパクLAMP2の機能に着目した加齢黄斑変性の初期病態モデルの開発
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19K18880
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
納富 昭司 九州大学, 大学病院, 助教 (10836563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 網膜色素上皮 / 加齢 / オートファジー / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、健常眼と加齢黄斑変性眼の組織標本を用いて、リソソーム膜タンパクLAMP2の発現解析を行った。その結果、LAMP2は網膜色素上皮細胞に顕著に発現しており、加齢黄斑変性眼ではその発現がが減少している事が明らかになった。さらに我々は、LAMP2を欠損した遺伝子改変マウスを用いて網膜・脈絡膜におけるLAMP2の役割を調べた。LAMP2欠損マウスでは、月齢依存的に網膜色素上皮細胞の基底膜側(脈絡膜側)に加齢黄斑変性のバイオマーカーであるドルーゼンに類似した老廃物が蓄積する事が、電子顕微鏡による解析で明らかになった。さらにこの沈着物にはドルーゼンと同様に、APOE, APOJ, APOA1などのリポタンパクおよびコレステロールの蓄積を伴っていた。この研究結果(Notomi S et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019)により、日本における高齢者の視覚障害の原因として重要な疾患である加齢黄斑変性において、LAMP2の発現低下が病態に関与している可能性が示され、さらにこのリソソーム膜タンパクを欠損すると加齢黄斑変性の初期病変であるドルーゼンに類似した沈着物が蓄積することがわかった。すなわち、加齢黄斑変性におけるリソソーム機能障害の関与が示唆されるとともに、網膜色素上皮細胞と脈絡膜に脂質の蓄積が生じる初期加齢黄斑変性の新しい動物モデルが提示された。これにより、今後の病態解明および発症予防治療の礎となる可能性があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
網膜組織標本を用いた実験およびLAMP2欠損マウスを用いた眼表現型の解析は予定通り進行し、研究結果は英文誌に掲載されている(Notomi S et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019)。さらにそのメカニズムを詳しく解析した研究が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、加齢黄斑変性の初期病変であるドルーゼンという老廃物の蓄積においてリソソーム膜タンパクの機能異常を介した網膜・脈絡膜の脂質蓄積が関わっている事を示した。さらに、初期加齢黄斑変性における新しい治療標的を探索するために、脂質蓄積の機序を解析するために、以下のような研究計画案が考えられる。 網膜色素上皮細胞および脈絡膜のコレステロール産生・輸送・脂質代謝メカニズムの検討 LAMP2欠損モデルにおける局所的なリポタンパク増加の役割解明 網膜色素上皮RPE・脈絡膜の脂質代謝異常と補体経路の関連解析
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Causes of Carryover |
研究者に予定の研究計画をすべて遂行する十分な時間がなかったため
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Research Products
(3 results)