2022 Fiscal Year Research-status Report
p38-p62シグナル阻害を介した視神経軸索保護機構解明
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19K18894
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐瀬 佳奈 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30821904)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軸索保護 / p38 / p62 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前よりラットのTNF誘発視神経障害モデルでオートファジーの活性上昇により軸索保護効果が得られる事を報告しており、オートファジー誘導体であり神経保護作用の報告があるAkebia Saponin D(ASD)の視神経軸索保護効果を検討した。また、ASDはMAPKシグナルを抑制することも報告されている。緑内障視神経症を想定したモデルとしてMAPKp38阻害で網膜神経節細胞死を抑制することが報告されている。今回は視神経軸索障害モデルにおけるオートファジーとMAPKp38の関係についても検討した。ASDはTNFによる軸索変性を有意に抑制した。また、ウエスタンブロットではTNFによりp-p38の発現は有意に上昇するが、ASDによりその発現上昇は有意に抑制された。p-p38の発現上昇はTNF硝子体注射後1週間だったのに対し、オートファジーフラックスのマーカーであるp62の発現上昇はTNF硝子体注射から1週間後と2週間後にも確認できた。これは、p-p38がp62の上流に位置することを意味していると考えた。 次に、p38阻害剤であるSB203580がTNF誘発視神経障害モデルにおいて与える影響について検討した。SB203580の硝子体注射によりTNFによる軸索障害を有意に抑制させた。更にSB203580はTNFによるp62の発現上昇を抑制し、LC3-IIの発現を上昇さておりオートファジーを活性化することがわかった。高眼圧モデルで他のp38阻害剤の点眼で視神経軸索保護作用の報告があるがオートファジーとの関連は検討されていない。今回の結果からp38阻害剤であるSB203580のTNF誘発視神経障害モデルにおける軸索保護作用にはp62を介した経路が存在する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファジーの活性化によりラットのTNF誘発視神経障害モデルにおいて軸索保護作用を示したことから、他の神経細胞でも神経保護作用が報告されオートファジーの誘導体であるASDが視神経軸索に与える影響について検討した。ASDは有意な軸索保護作用を示したが、ウエスタンブロットの結果でp38とp62の発現上昇のピークに時間差があることからp38はp62の上流に存在し、軸索保護のメカニズムとしてp62を介したp38の抑制が関与している可能性が考えられ論文化した。(Akebia Saponin D prevents axonal loss against TNF-induced optic nerve damage with autophagy modulation. Sase K et al., Mol Biol Rep. 2020) さらにそれを検証するため、網膜神経節細胞死に対し保護的な作用の報告があるp38阻害剤であるSB203580が視神経に与える影響について検討した。SB203580は有意な軸索保護作用を示した。また、TNFにより上昇したp62の発現を低下させ、LC3IIの発現を上昇させた。これは上記のp38はp62の上流に存在するという可能性を支持する結果となり論文化した。(Inhibition of p38 ameliorates axonal loss with modulation of autophagy in TNF-induced optic nerve damage. Sase K et al., Int Ophthalmol. 2023) これまでにもp38阻害剤による視神経軸索保護作用の報告はあったが、新たにそのメカニズムにp62を介した経路が存在する可能性を見出し論文化することができた為、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でオートファジーの活性上昇が視神経軸索に対し保護的に働くことを報告している。オートファジーの状態を示すマーカーとしてp62が用いられているが、これはオートファジーの機能が低下すると発現が上昇する。p62は緑内障性視神経症との関連が指摘されている酸化ストレスとも関連することが知られており、緑内障性視神経症ではp62を介してオートファジーと酸化ストレスの両方に関与する経路の存在があるのではないかと考えている。 酸化ストレスに対する生体防御機構としてKeap1-Nrf2システムの存在が知られているがNrf2は活性化されると酸化ストレスから細胞を保護する役割を担っている。また、Keap1-Nrf2システムを抑制する因子の1つとしてp62が知られている。 視神経軸索では軸索変性時にp62の発現が上昇していることからオートファジーの機能低下が考えられている。一方視神経の細胞体である網膜神経節細胞では細胞体死に酸化ストレスが関与していることが知られており、その酸化ストレスに対する防御反応を抑制する因子としてp62が知られている。つまりそれぞれ別の経路ではあるが軸索変性と網膜神経節細胞死それぞれにp62が関与している。緑内障とオートファジー、緑内障と酸化ストレスそれぞれ単独の報告はあるが両方に関わる因子について報告しているものはなく、p62を軸として酸化ストレスとオートファジー両者に関わる経路の存在があるのではないかと想定している。 今後は緑内障を想定したモデルでのp62と酸化ストレスの関係、緑内障性視神経症を想定したモデルでの抗酸化ストレスとオートファジー活性の相互作用に関して検討し緑内障性視神経症に対する治療の糸口としたい。
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Causes of Carryover |
抗体、試薬等研究室にあるものを使用でき新たに購入する必要がなかったため費用を削減できた。 今後は新しい試薬を購入し研究継続する必要があるためその費用として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)