2019 Fiscal Year Research-status Report
メラノーマ転移動物モデルにおける低酸素ストレス応答の解析
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19K18903
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
草島 英梨香 北海道大学, 大学病院, 医員 (30813547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HIF-1α / メラノーマ / 低酸素応答 / リンパ浮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体組織では、酸素供給が少ない部位では好気的代謝を抑えることで酸素消費を減らし、赤血球産生や血管新生を促すことで酸素の運搬効率を高め、酸素需給のバランスを保つように応答している。これら低酸素下での一連の生理応答を総称して低酸素応答と呼ぶ。がん細胞はこの低酸素応答を利用して、代謝を変化させたり、血管を誘引したり、細胞移動能を亢進することで、増殖・浸潤・転移を促進するとされる。低酸素応答システムにおいて、HIF1-α(Hypoxia inducible factor-1 alpha)が中心的役割を担っているが、本研究は薬剤投与によるHIF1-αの活性調整が腫瘍の転移・増殖能を抑制しうるかを、マウスモデルを用いて検討することを目的としている。使用するマウスモデルとして、手術非介入群に加えて、リンパ節生検群、リンパ節郭清群等のモデルを作製し薬剤投与の効果をコントロール群と比較し検証する。 本年度は、in vivoにおけるインドシアニングリーン、パテントブルーといった色素を用いたリンパ節同定・切除・郭清の手術手技、および薬剤(HIF-PH阻害薬)の腹腔内投与の手技を確立した。また手術介入をしない通常マウスの薬剤投与群と経過観察群(コントロール)の後肢足底に高転移性B16F10Luc2メラノーマ細胞株を移植し、それぞれの個体で肺転移、リンパ節、局所皮膚(原発巣含む)の腫瘍細胞量の解析をし、転移・増殖能の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の要となる薬剤投与について、比較的簡便でマウスにとって有害でない投与方法および投薬容量・濃度に関して複数の検討を行った。検討の結果、腹腔内投与10μg/g, 1ml投与が妥当と考え、実験計画を引き続き進める方針である。また当初の計画通り、各モデル群のマウス後肢足底にメラノーマ細胞株を移植し、それぞれの群に対しA. 経過観察、B.DMOG(HIF-PH阻害薬)投与の介入を行った。増殖・転移能評価のための腫瘍細胞量の検討として、ルシフェラーゼアッセイ法で安定した検査結果が得られているので、同法を主要アウトカムの判定に引き続き用いる。アウトカムの判定週数は腫瘍移植後3週または4週のいずれかで現在検討中であり、過去の類似研究や本年度の実験データから妥当な週数を選択する予定である。解析・検査および手術操作などの介入においておおむね安定的な手技ができており、当初の予定通り実験が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度中に遂行しきれなかった実験計画について引き続き取り組むとともに、本年度予定していた課題にも取り組む。遂行中の実験計画について、主要アウトカムである転移・原発巣の細胞量の評価を進めているが、現時点では統計学的な有意差を得るに至らず、引き続き個体数を増やしていく予定である。また、昨年度遂行できなかったin vitroの実験系の検討を進める。具体的には薬剤によるHIF-1αの発現調整が腫瘍内のHIF-1αの発現に及ぼす影響を評価するため、リアルタイムPCR、ELISA、ウエスタンブロッティングによる経時的な検討を行う。また低酸素プローブであるピモニダゾール投与により低酸素性細胞を検出するなどして酸素環境の変化を評価する予定である。
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