2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病性潰瘍を骨髄から治すー骨髄自律神経修復による根治療法の開発
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19K18908
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
北 愛里紗 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20642185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖尿病性潰瘍 / 細胞老化 / 線維芽細胞 / 脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者では治癒力の低下から皮膚潰瘍が骨にまで達し難治となる。骨髄間葉系幹細胞および脂肪前駆細胞は、糖尿病患者および糖尿病マウスの体内では本来の挙動を示していないことが過去の報告から明らかになっている。本研究ではこの原因として、皮下脂肪と骨髄に着目して研究を進めた。その中で、糖尿病モデルマウス(Leprdb/db)の皮下脂肪を非糖尿病モデルマウス(Leprdb/+)に移植した場合著しく創傷治癒が遅延したことから、皮下脂肪に着目して検討を行った。すると、糖尿病モデルマウスの創傷治癒過程で皮下脂肪に存在する間葉系細胞の細胞老化が非糖尿病モデルマウスと比較して異常化し、創傷治癒を阻害していることが明らかになった。細胞老化は、細胞にダメージが加わったときに異常な増殖を防ぐための生体防御システムであり、老化細胞はすぐには死滅せずに自らの増殖を止めると様々な因子の分泌現象(senescent associated secretary phenotype; SASP)を起こす。この皮下脂肪の老化細胞によるSASPが糖尿病モデルマウスの創傷治癒に影響するのではないかと考え、糖尿病モデルマウスおよび非糖尿病モデルマウスの皮下脂肪組織から培養上清を回収し、メンブレン抗体アレイを行った。糖尿病モデルマウスおよび非糖尿病モデルマウスの皮下脂肪由来分泌物で、構成タンパク質が異なることが明らかになった。さらに、皮膚由来線維芽細胞にそれぞれ糖尿病モデルマウスおよび非糖尿病モデルマウスの皮下脂肪由来分泌物を添加培養してスクラッチアッセイを行った。すると、糖尿病モデルマウス由来分泌物は線維芽細胞の増殖を抑制し、糖尿病の皮下脂肪由来の分泌物が皮膚の創傷治癒に影響することが推測された。現在ヒトでも同様の現象が起こっているか、糖尿病患者の潰瘍組織および、非糖尿病患者の潰瘍組織を用いて検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた実験は計画通りほぼ終了している。ヒト組織は予定されていたサンプル数は回収できており、この解析が終了し次第、論文投稿準備を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトサンプルの解析が終了し次第、論文執筆を開始する。
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Causes of Carryover |
2019年度までの研究進捗状況に遅れが生じており、学会発表や論文にかかる英文校正費用などが支出されなかった。また、コロナウイルス流行の影響で研究が制限された期間があり、実験に必要な物品の購入が繰り越された。今年度前半で実験に使用する試薬を購入し、後半で論文投稿を行い、英文校正費用が支出される予定である。
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