2019 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of complex interplay of mechanosignaling pathways in abnormal scarring
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19K18919
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
土肥 輝之 日本医科大学, 医学部, 講師 (10575385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 異常瘢痕 / メカノシグナル伝達経路 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
力学的な刺激が、皮膚の恒常性および外傷や創傷に対して与える影響については未だ不明な部分が多い。 力学的刺激はケロイド・肥厚性瘢痕を代表とする過剰創傷治癒・線維増殖性疾患の大きな要因となっていることが分かってきた。 そのため、メカノシグナル伝達経路の適切な制御がこれらの直接的な治療に繋がると考えており、本研究によりケロイド・肥厚性瘢痕における力学的要素に基づく病態生理の解明および治療法の確立を目指している。 異常瘢痕であるケロイドにおいて、応力の高いケロイド内部辺縁ではIntegrin-FAK経路、YAP/TAZ経路などの多くのメカノシグナル伝達経路が高発現している一方、メカノシグナル伝達経路の一つであるCaveolin-1 / ROCK-1経路は、ひずみが強いケロイド辺縁正常皮膚部で高発現していることが判明した。 更に、免疫組織化学染色の結果、ROCK-2についても、同じく辺縁正常皮膚で高発現していることがわかってきており、これらCaveolin-1 / ROCK1/2経路が、高発現している細胞群は主に真皮乳頭層から網状層にかけての間質内に存在し、血管近傍の細胞での高発現も見られ、線維芽細胞・周皮細胞等を中心に発現している可能性が示唆された。 現在細胞群の分離採取法の最適化を行っている。 また、実際の日常生活動作による異常瘢痕における力学的環境のコンピュータシミュレーション解析の結果、この影響を細胞レベルだけでなく、組織レベルでとらえることの重要性が判明した。 とりわけ、ケロイド辺縁正常皮膚やケロイド内部に存在する血管構造に強いひずみや応力がかかることでの周辺組織・細胞や血管構成細胞にもたらす影響の重要性が示唆され、現在さらにこの異常瘢痕発症・増悪のメカニズムの詳細についても検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初より標的となる細胞群の採取をした上での網羅的解析を予定しているが、現在はレーザーマイクロダイセクションでの分離採取、FACS・MACSによる分離採取など、質の確保された採取方法の最適化を行っているところであり、時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、標的となる細胞群に応じた最適な採取方法を検討しており、現在レーザーマイクロダイセクションの分離採取に加え、表面マーカーを使ったFACSなどでの分離採取を検討しているところであり、時間を要している。 網羅的解析方法に関しても、細胞群に応じた解析方法の最適化も検討し、次年度の研究課題を遂行していく予定である。 また、実際の力学的解析の結果、ケロイドや肥厚性瘢痕などの過剰瘢痕の血管構造に対して、日常生活動作での力学的刺激がかかることによる、周辺組織への影響や血管そのものへの影響も合わせて検討しているが、残り1年と限られた研究期間であり、アプローチしやすいものから、順次優先的に遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
細胞群の特定と採取方法の検討に予想以上に時間がかかり、その先にある網羅的解析にかかる費用やそれ以降に使う予定の試薬の購入がされていないことが主な理由と考えられ、次年度に遂行する予定である。
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