2019 Fiscal Year Research-status Report
腹部を網羅するレシピエント血管の作成と形態学的変化に関する研究
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19K18920
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
桑原 大彰 日本医科大学, 医学部, 講師 (30614820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動物実験 / ラット / 血管 / 皮弁 / 吻合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は①悪性腫瘍切除や外傷などによって人体に大きな欠損(遊離皮弁が必要)が生じてかつ適切なレシピエント血管が存在しない場合に体部全域を網羅するレシピエント血管を作成することと②レシピエント血管および皮弁移植後に及ぼされる体循環変化を体系的に評価し臨床応用時の安全性を確保することであり、ラットを用いた動物実験を計画した。2019年度科学研究費助成事業基金を取得し、日本医科大学武蔵小杉病院倫理委員会の承認を得たのち本実験に着手した。ラットの鼠径動静脈を用いて作成したシャント血管(研究課題でいうループ血管のこと)に腹壁動静脈を有意血管とする腹壁皮弁を移植縫合しその皮弁生着や他合併症を観察した。実験数は初年度の目算であった10匹を大幅に超え15匹23血管に至った。皮弁の生着確認などのエンドポイントまでの観察を完了しているが、計画当初予定していた90%の生着(達成目標)には及ばなかった。これは想像以上に血管径が細かったためと人体での手術時と同程度の十分な血液凝固の予防が行えなかったためである。既にこの概要と進捗状況は第28回日本形成外科学会基礎学術集会で口演しており、逐次学会や論文での報告をしていく所存である(2020年8月に開催予定の第63回日本形成外科学会総会・学術集会でも口演予定である)。 引き続きの症例集積と実験計画を遂行する一方で、体循環への影響を調べるための血清マーカー(心腎関連マーカー)の採血や血管形態の病理変化を観察予定である。本研究による手技の安全性が証明され、実臨床に応用されれば、様々な条件下(放射線治療後、頻回のサルベージ手術、Zone of injury、3枝病変をもつ下腿潰瘍)でのレシピエント血管不足時に純粋に静脈グラフトを求めるよりも術時間の短縮や合併症の低減(吻合回数を減じたり術野外での操作分のマンパワーや術時間短縮による)が期待できる術式が確立されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
助成金交付前から実験計画の準備を行っていたため。また2019年度は予想よりも多くのエフォートを本研究に費やすことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき引き続きの症例集積と実験計画を遂行する所存である。またシャント血管(ループ血管)作成時の体循環への影響を調べるための血清マーカー(心腎関連マーカー)の採血や血管形態の病理変化を本年度開始できればと考えている。マーカー採血は研究計画を逸脱した内容であるためこれから算出する諸経費が研究費でまかえない場合はこの限りではない。
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Causes of Carryover |
研究動物を低週数から飼育すること、必要物品のうち実験器具の幾らかを本研究費外で調達できたため次年度使用額が0より大きくなったものと考える。引き続き本研究を遂行する所存である。
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