2019 Fiscal Year Research-status Report
HIF-PH阻害剤を用いた顔面神経麻痺治療~神経再生促進と表情筋萎縮防止の二刀流
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19K18922
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 隆洋 北海道大学, 大学病院, 医員 (90829433)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HIF-1α / 顔面神経麻痺 / 軸索再生 / 低酸素ストレス応答 / 神経移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢神経麻痺モデルを用いたHIF-1αの基礎研究として、HIF-1αノックアウトマウスを用いた坐骨神経麻痺に対する研究があり、HIF-1αの下流に位置するVEGFAを介した経路だけでなく別の経路からも軸索再生が誘導される可能性が示唆された。本研究ではこのHIFの分解を阻害するHIF-PH阻害剤に着目した。HIF-1α分解を阻害するHIF-PH阻害剤は、エリスロポエチン産生増加や赤血球産生増加、鉄利用効率の向上の観点から注目され、腎性貧血に対する治療薬として発売が開始されたばかりの期待の新薬である。われわれは、顔面神経麻痺に対する神経移植モデルにおいて軸索再生促進および表情筋における筋再生・保護の観点からHIF-1 αによる効果を解明する事を本研究の目的とした。 まずは、顔面神経麻痺および神経移植モデル作製における手技の確立および安定を図った。当初予定していた顔面神経本幹における1cmの欠損を作り神経移植を行うモデルは不可能だった。そのため、他研究でも報告があるモデルに習い、顔面神経本幹を用いず、その枝であるBuccal branchを用いたモデルへの変更を行った。またヒゲなど中顔面の動きは Buccal branchとMarginal branchとの二重支配であるため、切除が必要となるMarginal branchを神経移植のドナーとして使用し、大耳介神経は使用しない形へ変更を行った。以上の内容でモデル作製を再度試行し問題ない事を確認した。変更後の顔面神経麻痺に対する神経移植モデルの確立および手技の安定化が図られたため、今後は予定していた様々な評価検討を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として、顔面神経麻痺および神経移植モデルの確立および手技の安定化を図った。当初予定していた顔面神経本幹における1cmの欠損作成は、枝の分岐までの距離が短かったため、実現不可能だと判明した。そのため顔面神経本幹を用いず、その枝であるBuccal branchを用いたモデルへの変更を行った。またヒゲ周囲の動きはBuccal branchとMarginal branchとの二重支配であるため、Marginal branchの切除も必要となる。従ってMarginal branchを神経移植のドナーとして使用し、大耳介神経は使用しないモデルとした。Buccal branchに7mmの欠損を作成し、同様にMarginal branchから7mmの神経を採取して移植した。 この新たな枝を用いたモデルの手技の確立・安定をまず図ることとし、モデルの作製については安定した手技による実現可能な状況となった。HIF-PH阻害剤であるDMOG(Dimethyloxaloylglycine)の投与法の違い(局所および腹腔内投与)による成績比較検討にまでは至ることが出来なかった。DMOGの局所投与モデルの作成を開始し、ヒゲの動きの評価を用いて効果判定を開始している。予定していた腹腔内投与群のモデル作製を今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
HIF-PH阻害剤であるDMOG(Dimethyloxaloylglycine)の投与法の違い(局所および腹腔内投与)による評価・比較を行う。DMOGの局所投与群については、複数の濃度にわけてモデルを作製し、比較検討を行う。また腹腔内投与による全身投与群についてもモデル作製を開始し、局所投与群との比較を行う。 評価法については現在すでに評価を開始している実際のヒゲの動きを用いて行い、神経麻痺からの回復の程度や速度についても評価をすすめる。 その他の評価として、病理組織学的評価を行い、軸索の数やサイズなどによる評価を行うことで、各群の差異を見出していく予定である。また採取した神経のどの部位(中枢側なのか末梢側なのか)なども複数の点で評価することで、実際の動きの改善との相関性を明らかにすることを検討している。 また表情筋についても採取し、病理組織学的評価による定量的評価を行う予定としている。 病理組織学的評価については、免疫組織染色を含め多角的に検討・評価を行う予定である。
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