2019 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞培養上清のセレクトーム解析および浄化濃縮法の開発
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19K18929
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
中川 志保 自治医科大学, 医学部, 臨床助教 (60784345)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 確定的放射線障害 / 脂肪幹細胞 / 創傷治癒 / 培養上清 / 浄化濃縮培養上清 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.放射線照射マウスにおける確定的放射線障害の経時的変化の解明 マウスの背部皮膚のみを牽引し、隔週10Gy×4回、総量40Gyの放射線照射を行い、照射1か月後、3か月後、6か月後群と、非照射群に関して、創治癒の過程を記録した。この結果、無処置群においては創治癒に平均14日要したのに対して、照射1か月後群においては平均27日、照射3か月後群においては平均16.4日、照射6か月後群においては平均20日間を要した。 続いて、マウスの背部皮膚および皮下全層に、2Gy×20日間、総量40Gyの放射線照射を行い、照射1か月後、3か月後、6か月後に、同様に創治癒の過程を記録した。この結果、いずれも隔週10Gy×4回照射法と比較して治癒期間の延長がみられた。ただし、照射6か月後群においては、4/5匹で体重の著名な減少により実験前後に死亡し、消化管への放射線障害による下痢、食思不振、低栄養状態が創傷治癒に影響している可能性も考えられた。よって放射線照射は、皮膚のみ牽引する方法が優れていることが分かった。 以上より、放射線照射後は、一時的に治癒が悪化する急性期を越えた後には、創傷治癒能は時間の経過とともに低下していくことが認められた。放射線障害では経時的に線維化や萎縮がみられることからも、創傷治癒能に影響する組織内の幹細胞が放射線照射により選択的に障害を受けていることが示唆された。ASCsやその培養上清を用いた再生医療は、それぞれが、減少した脂肪幹細胞を補充する、あるいは活性化することにより、創傷治癒の改善に寄与することが期待される。放射線障害組織に対する根本的治療法として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず初めに、放射線照射マウスにおける確定的放射線障害の経時的変化の解明を行い、上記の結果を得ることができた。これにより創傷治癒能が最も悪化する放射線障害マウスの作成方法を確立した。第二段階として、マウス背部皮膚に2Gy×20日間、総線量40Gyを照射後2か月経過した創傷モデルに対し、ASCs、ASCs培養上清、ASCs浄化濃縮培養上清、PRP、Vehicleの局所注入を3日毎3回行い、創治癒の過程を記録する。 これと並行して培養上清の浄化濃縮方法の確立と効能評価をおこなった。浄化濃縮は撹拌型限外ろ過装置を使用し、ろ過用メンブレンとして、再生セルロース製ウルトラセルメンブレンを用いた。培養上清、濃縮液、濃縮後廃液の効能評価においては、細胞増殖実験を行った。この結果、酸素濃度6% O2、血清フリー、コンフルエント期にある幹細胞では、HGFの分泌が最も多く認められた。培養上清と比較し、濃縮液にHGF濃度の増加とともに、アンモニア量の減少が認められた。濃縮液では、細胞増殖を促進することが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.放射線照射マウスにおける確定的放射線障害の経時的変化の解明 追加実験として、隔週10Gy×4回、総量40Gyの放射線照射後9か月後、12か月後の創治癒の過程を記録し、より長期の経時的変化について確認する。また、組織免疫学的検索も行う予定である。 2.脂肪幹細胞および浄化濃縮培養上清を用いた再生医療の有効性と安全性の検証 ヌードマウス背部皮膚に2Gy×20日間、総線量40Gyを照射後2か月経過した創傷モデルに対し、ASCs、ASCs培養上清、ASCs浄化濃縮培養上清、PRP、Vehicleの局所注入を3日毎3回行い、創治癒の過程を記録する。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅延や見直しにより、余剰金が生じた。 余剰金については、次年度の実験に係る消耗品や実験動物の購入に使用する予定。
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