2019 Fiscal Year Research-status Report
外科的侵襲によって生じる新たな先天性リンパ浮腫モデルの確立と病態の解析
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19K18934
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加茂川 留理 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70749324)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパの鬱滞によって浮腫をきたす「リンパ浮腫」の患者は全世界的に数多く存在するが、その病態には依然として不明な点が多く、根治的治療法もほとんど存在しない。本研究は、もともと皮膚の創傷治癒に関連すると考えて選定された遺伝子Twist2のノックアウトマウスにおいて胎仔に外科的侵襲を加えることにより全身に著明な浮腫が誘発されることを偶然見出したのを契機に、「胎生期の外科的侵襲によりリンパ浮腫をきたす新たなモデル」の確立、およびその分子メカニズムについての知見を得ることを目的として行った。胎生13日目のTwist2ノックアウトマウスに胎仔手術を施し、3日後に胎仔を観察したところ、胎仔の全身に著明なリンパ浮腫が認められた。それら個体を免疫組織化学的に解析したところ、拡張・蛇行したリンパ管の内部に赤血球が充満している、「blood-filled lymphatic vessels」の像が体表のいたるところで観察された。一方、胎仔手術を行わなかった場合にはそのような浮腫は観察されず、またTwist2ノックアウトマウス以外では同様の浮腫は認めなかったことから、Twist2ノックアウトという遺伝的背景を持った個体に対して胎生期に外科的侵襲が加わることによりリンパ浮腫が発生したものと想定された。また、拡張・蛇行したリンパ管の周囲には、Lyve-1を発現するマクロファージが多数存在し、リンパ浮腫の発生に関与している可能性が示唆された。リンパ浮腫を発症している胎仔においては、その数が明らかに少なかったことから、外科的侵襲によって性質の変化したマクロファージがリンパ管の発生に影響を及ぼしているものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎生期の外科的侵襲によってリンパ浮腫が誘発されることの再現性は概ね得られることが分かった。ただし、浮腫を発症する個体とそうでない個体が存在し、その違いがどのように生じるのかについては判明していない。今後、マクロファージを中心とした炎症細胞がその発生とどのように関わっているのかについて、メカニズムを明らかにするべく研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
外科的侵襲に伴って皮膚に存在するマクロファージを中心とする炎症細胞が活性化され、リンパ管新生やその再構築に影響を及ぼしているとの仮説のもと、分子メカニズムを解明するべく研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究はマウス胎仔を主要な研究材料として進める研究であり、その必要数は研究の進捗によって左右される。2年間の研究機関のうちの前年度は、野生型マウスを用いた観察研究を主体に進められたため、使用薬剤や使用する動物の数を抑えることができたため、次年度使用額が生じたと分析している。 次年度は使用薬剤やその数量が前年度を上回る可能性が高く、引き続き試薬やマウスの購入費用として使用する予定である。
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