2020 Fiscal Year Annual Research Report
外科的侵襲によって生じる新たな先天性リンパ浮腫モデルの確立と病態の解析
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19K18934
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加茂川 留理 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70749324)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リンパ浮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
リンパのうっ滞によって浮腫をきたすリンパ浮腫の患者は全世界的に数多く存在するが、その病態には依然として不明な点が多く、根治的治療法もほとんど存在しない。特に、先天性リンパ浮腫はその経過中に重症化して難治化することが多く、また悪性腫瘍の発生母地にもなるなど問題が多いが、発症のメカニズムはほぼ不明である。本研究では、ある種のマウスにおいて胎仔皮膚の創傷治癒モデル検討中に全身の著明な浮腫が誘発されるというわれわれが偶然見出した所見をもとに、外科的侵襲によって誘発される新規のリンパ浮腫モデルを確立することを目的に実験を行った。C57Bl/6JをバックグラウンドにもつTwist2ノックアウトマウスで浮腫が誘発されたことから、C57Bl/6J野生型マウスにおいて浮腫が誘発されるかどうかについて検討を行った。胎生13日目の妊娠マウスを麻酔下に開腹し、子宮の左右どちらか1列のみにおいて子宮壁の無血管側を切開し、羊膜に包まれた胎仔を子宮外へ脱出させ、もう1列は無処置とする。子宮と胎仔を腹腔内へ完納して閉創する。処置後24時間で胎仔を観察したところ、無処置側子宮の胎仔には異常を認めなかったが、子宮外へ脱出させた胎仔の約60%に浮腫が誘発されることが分かった。これらの胎仔においては肉眼的にblood-filled lymphatic vesselsを認め、組織学的にもリンパ管の著明な拡張が観察された。浮腫をきたした胎仔においては、全例で胎盤のうっ血を認めており、常位胎盤早期剥離と同様な病態によって胎仔の血流変化が生じ、リンパ浮腫が誘発されている可能性が示唆された。本研究により、妊娠中期に子宮外へ脱出させるという機械的刺激によって胎仔に全身性のリンパ浮腫が誘発され得ることが分かり、ヒトの先天性リンパ浮腫の病態にも関与している可能性があると考えられた。
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