2019 Fiscal Year Research-status Report
New approach for oral mucus protection with plant-originated Extract
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19K18941
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
布目 祥子 東北大学, 歯学研究科, 大学院非常勤講師 (60758184)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗酸化 / 天然抽出物 / 口内炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔内のトラブルに粘膜炎症における疾患があり、免疫力の低下やストレスが原因とされ過剰に生成した活性酸素が原因で口内炎を誘発させる。そこで、活性酸素を抑える抗酸化物質であるブドウ種子エキス(grape seed extract, GSE)に着目した。 本研究ではGSEの短時間処理による炎症誘発性刺激に対する防御作用を検証するとともに、ストレス応答系および炎症反応系を中心に作用機序を解明することを目的とした。将来的には口内炎などの炎症におけるセルフメディケーション処置として安全で副作用の少ない口腔粘膜保護剤としての活用を目指し、健康な口腔内環境の獲得と維持を見据えた口腔管理を実現させることを目標としている。 一般的に口腔内の粘膜に起きた炎症性疾患は口内炎と呼ばれ、もっとも多くみられるのがアフタ性口内炎(潰瘍性口内炎)である。疾患の原因は詳しくはわかっておらず、一部は免疫力の低下やストレスが原因で発症すると言われている。生体防御システムのバランスが崩れることにより過剰に生成された活性酸素が細胞や組織を損傷させ炎症を引き起こす。従って、口内で活性酸素が関与した場合、口内炎の発症につながることから、口内炎予防のためにも活性酸素を抑えるというアプローチが必要である。 そこで、抗酸化物質であるポリフェノールに着目した。特にブドウ種子抽出物GSEにはポリフェノールの一種であるプロアントシアニジンが多く含有され、抗酸化作用を有する物質として、機能性食材として用いられており、その活性はビタミンC、ビタミンEなどよりも強力であると報告されている。プロアントシアニジンを高含有するGSEを細胞に処理した結果、ヒト歯肉繊維芽細胞(hGF)に対して増殖促進作用を有し、細胞生存率が維持されるという細胞保護効果を発揮することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究期間において、GSEを中心として各種ポリフェノールを使用して研究を進めている。初年度となる2019年度ではGSE短時間処理による抗炎症作用の影響について研究を進めることを目的とした。歯周病原因菌の一つであるPorphyromonas gingivalis などのグラム陰性細菌のLPSやTNF-αなどによって誘導される炎症応答に対するGSEおよび各種ポリフェノール短時間前処理の影響を比較検討した。マウス由来骨芽細胞MC3T3-E1に加えて、口腔内細胞であるヒト歯肉繊維芽細胞hGFにおいてMTT-assayを実施した。2つの細胞系において、LPS各種の濃度の条件出しをまず行い、hGFに対してGSEを短時間処理すると、増殖促進作用、細胞生存率の維持という細胞保護効果を発揮する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の実験に引き続き、今後は炎症反応において中心的役割を示すマクロファージ系細胞に対しても細胞増殖性・細胞生存率に関する実験を行い、炎症を引き起こされる細胞だけでなく炎症を誘導する細胞に対する影響も検討する。 またGSE(その成分であるプロアントシアニジン)の細胞内局在性および細胞膜流動性についての検討も計画している。GSE処理細胞を分画(細胞膜、ミトコンドリア、ミクロゾーム、核、サイトゾール)し、どの画分にGSE成分が多く局在するかを機器分析および生化学的分析(各分画の抗酸化活性を指標)により調べる。細胞膜流動性はスピンプローブを用いた電子スピン共鳴法により測定する。これらの影響を低分子ポリフェノールと比較することで、GSEおよびその構成成分であるプロアントシアニジンの特長を明確化する。 ポリフェノールの研究に関してはすでに多くの研究がなされている。ポリフェノール類摂取が循環系、代謝系に変化を与えることなど研究もされているが、基本はポリフェノールの抗酸化活性が柱となっている。すなわち、体内で発生した活性酸素種を消去することで酸化的傷害を軽減することがその機序として提唱されている。それに対して本研究は、ポリフェノールの中でもオリゴマーという点で特徴があるプロアントシアニジン高含有のGSEに着目し、かつ抗酸化活性に依存しない生理活性を有効活用するとともにその機序を解明しようという点で新規性・独創性が高いものである。特に前者は、口腔内への直接適用を考えており、経口摂取の場合のように消化管からの吸収性や代謝というような生体利用性を考慮することなく、細胞レベルでの効果がそのまま生体でも期待できるという点が魅力的である。
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