2019 Fiscal Year Research-status Report
骨恒常性を制御する新規間葉系細胞とその機能分子の同定
Project/Area Number |
19K18943
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
塚崎 雅之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 日本学術振興会特別研究員 (20829527)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 骨格幹細胞 / 骨膜 / 骨成長 / 破骨細胞 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
新たな骨代謝制御因子を探索する過程で、骨組織に高発現するタンパク質翻訳後修飾酵素Hmtfを見出した。そこでHmtfのfloxマウスを作成し、破骨細胞における機能を解析するためにHmtf flox/ΔCtsk-Creマウスを作成したところ、加齢に伴い著名な骨量減少、骨の長軸方向および短軸方向の成長障害、成長板軟骨の短縮と構造異常、頭蓋冠の骨量減少が認められ、当該マウスは内軟骨性骨化と膜性骨化の両方が障害されることが明らかとなった。 予想に反し、骨形態計測による破骨細胞パラメーターや、in vitroにおける破骨細胞分化及び機能はHmtf flox/ΔCtsk-Creマウスにおいて正常であった。骨髄キメラマウスの作成により、破骨細胞ではなく、非血球系細胞でHmtfが欠損することが、当該マウスの表現型の原因であることが明らかとなった。Ctsk-Creは破骨細胞だけでなく、骨膜に存在する骨格幹細胞(PSC: periosteal stem cell)でも発現することが報告されている。そこでPSCの表現系を解析したところ、Hmtf flox/ΔCtsk-Cre マウスではコントロールと比較してPSCの数が著名に減少していた。 そこで、RNA-seqによりPSCで高発現する遺伝子を探索し、可溶性因子Solfxを同定した。Solfx flox/flox Ctsk-Creマウスを樹立し解析したところ、当該マウスは加齢に伴い著名な骨量減少、骨の長軸方向および短軸方向の成長障害、成長板軟骨の短縮と構造異常、頭蓋冠の骨量減少が認められ、Hmtf flox/ΔCtsk-Creマウスと同様に内軟骨性骨化と膜性骨化の両方の障害が認められた。 本研究により、これまで膜性骨化にのみ寄与すると考えられてきたPSCが、可溶型因子Solfxの産生を介して内軟骨性骨化にも寄与することで、生後骨成長のマスター制御細胞として働くことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、新たな骨代謝制御因子を探索する過程でタンパク質翻訳後修飾酵素Hmtfを見出した。Hmtf flox/ΔCtsk-Creマウスの表現型の解析を進めるうちに、このマウスは骨膜幹細胞(PSC)を特異的に欠損しており、これまで見落とされてきたPSCの機能を解明するために有用なマウスモデルであることが明らかとなった。さらに、Hmtf flox/ΔCtsk-Creマウスから回収したPSCの遺伝子発現解析から、PSC由来の内軟骨性骨化制御因子Solfxの同定に成功した。以上のように、新規マウスの作成および当該マウスの表現型解析により、骨膜の新たな機能を明らかにしており、研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究を進める過程で申請者は、Hmtf flox/ΔCtsk-Creマウスでは、骨髄中の造血幹・前駆細胞の数が顕著に減少することを見出しており、皮質骨により解剖学的に隔離された位置に存在するPSCが、可溶性因子の分泌を介して骨髄環境の制御にも寄与するという興味深い知見を得ている。今後、RNA-seq解析により明らかになったPSCに高発現する遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作成・解析していく予定である。PSCの造血制御、免疫制御機構を解明することは、「骨膜による免疫制御」という新たな概念の創出に繋がり、骨代謝研究領域のみならず生命科学全体に大きなインパクトを与えうると考えている。
|