2019 Fiscal Year Research-status Report
骨芽細胞成熟過程におけるRunx2のTln2を介した突起形成制御機能の解明
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19K18947
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
坂根 千春 長崎大学, 先導生命科学研究支援センター, 助教 (40792578)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨芽細胞突起形成 / Runx2 / Tln2 |
Outline of Annual Research Achievements |
未熟骨芽細胞はコラーゲンの走行がランダムな繊維骨を形成するが、繊維骨は容易に破骨細胞によって吸収され、成熟した骨芽細胞がコラーゲンの走行が一定の層状骨を形成する。骨芽細胞の成熟過程で、Runx2 は未熟骨芽細胞に強く発現しており、成熟とともに発現は低下する。骨芽細胞特異的に Runx2 を過剰発現したトランスジェニック (Tg) マウスでは、骨芽細胞の成熟が抑制され、骨は未熟骨芽細胞で占められ、ほとんど骨細胞が存在せず、骨細胞突起の著減が観察された。この時、Runx2 の下流で骨芽細胞突起形成を阻害する分子を探索したところ、Talin2 (Tln2) の関与が示唆された。Tln2 は、細胞接着のダイナミクスに関与する分子の一つで、Tln2 ノックアウト (KO) マウスは、skeletal myopathy の表現型を示すことが報告されているが、骨芽細胞の分化・形態・機能および骨代謝に関する報告はない。 本研究では、骨芽細胞分化に必須の転写因子である Runx2 が Tln2 の発現を介して、突起形成を主とした細胞骨格を制御することにより、骨芽細胞の成熟を調節している可能性を検討する。まず、骨格形成における Tln2 の生理的意義を明らかにし、次に Runx2 による骨芽細胞突起形成および骨芽細胞成熟抑制に Tln2 が関与するか明らかにする。 Tln2 KO マウスを作製し、継時的な観察を行った。Tln2 KO マウスとコントロールマウスで、骨量などに差を認めなかった。さらに、Runx2 Tg マウスと Tln2 KO マウスを交配し、Runx2 Tg / Tln2 KO マウスを作製した。Runx2 Tg / Tln2 KO マウスでは、Runx2 Tg マウスの表現型の一部が回復していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tln2 KO マウスを作製し、継時的な観察を行った。組織解析とマイクロ CT で調べたが、Tln2 KO マウスとコントロールマウスの間で、組織学的およびマイクロ CT の各パラメーターに明確な差異は認められなかった。 次に、Runx2 Tg マウスと Tln2 KO マウスを交配し、Runx2 Tg / Tln2 KO マウスを得た。4 週齢のマウスを、マイクロ CT と組織解析にて調べた結果、Runx2 Tg マウスの表現型の一部がレスキューされていた。特に、Runx2 Tg マウスで見られるコラーゲン走行の乱れが、顕著に回復していた。これらのことから、Runx2 Tg の表現型の一部は、Tln2 を介したものである可能性が示唆された。そのメカニズムについて、今後の研究の推進方策に記載した方法で、検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
4 週齢の Runx2 Tg / Tln2 KO マウスの大腿骨を用いて、コラーゲン繊維配向とアパタイト配向性を定量するとともに、ナノインデンテーション解析で、骨強度を調べる。 Runx2 が Tln2 の発現を介して突起形成を主とした細胞骨格を制御することにより、骨芽細胞の成熟を調節している可能性を検討するために、4 週齢の Runx2 Tg / Tln2 KO マウスで、塩酸コラゲナーゼ法を用い、走査型電子顕微鏡で骨細胞突起を観察し、Runx2 Tg マウスと比較する。また、組織切片の鍍銀染色で骨細管を観察・比較する。 Tln2 Tg マウスは、Runx2 Tg マウスの表現型の一部を有すると予測されるため、その作製も行った。4 週齢マウスでマイクロ CT 解析を行うとともに、大腿骨パラフィン切片で、皮質骨の骨細胞計測、偏光顕微鏡でコラーゲンの走行を調べ、野生型マウスおよび Runx2 Tg マウスとの比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
Tln2 KO マウスを、組織解析とマイクロ CT で調べたが、表現型は観察されなかった。これを多くのマウスで繰り返し確認したため、real-time PCR 法による骨芽細胞マーカー発現解析、ウェスタンブロットでの FAK (focal adhesion kinase) のリン酸化解析、血清骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーの解析の施行が遅れた。次年度に繰り越した研究費は、遺伝子発現解析関連試薬、各種抗体、ELISA キット等の購入、およびマウスの維持費に使用する。
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