2019 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of monocarboxylate transporter 1 in bone and bone marrow adipose tissues
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19K18950
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
笹 清人 昭和大学, 歯学部, 助教 (50823069)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MCT / 間葉系幹細胞 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
モノカルボン酸トランスポーター1(monocarboxylate transporter 1: MCT1)は、モノカルボン酸(乳酸、ピルビン酸、ケトン体等)を細胞内外に輸送する担体である。申請者は間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化をMCT1が制御するというMCT1の新しい機能を見出した。本研究の目的は骨および骨髄脂肪組織におけるMCT1の機能を解析することである。本研究では1)間葉系幹細胞から骨芽細胞および脂肪細胞への分化におけるMCT1の役割を解明、2) Mct1+/-マウスを用いた骨・骨髄脂肪組織におけるMCT1の機能の解析の2つの課題を遂行する。 当該年度では、1)間葉系幹細胞から骨芽細胞および脂肪細胞への分化におけるMCT1の役割を解明することとした。マウス線維芽細胞株C3H10T1/2細胞および3T3-L1にMct1 siRNAを導入しMct1遺伝子のknock downを行い各種解析を行った。結果としてMct1 siRNAを導入した3H10T1/2細胞および3T3-L1細胞の両者において脂肪細胞分化の促進が認められた。次に、MCT1の輸送基質であるL-乳酸を2つの細胞株に添加すると脂肪細胞分化を促進することが明らかとなった。これらのことからMCT1による細胞内乳酸濃度の調節が間葉系幹細胞の分化の振り分けに重要な因子である可能性が示唆された。また、間葉系幹細胞性の維持に働くWnt/β-cateninシグナルがMCT1 siRNAにより抑制されていることも見い出した。 MCT1による間葉系幹細胞の分化制御機構を解明できれば、骨量の減少だけでなく骨髄脂肪組織の増加を伴う骨代謝疾患である老人性および閉経後骨粗鬆症の治療法の開発に大きく寄与する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3H10T1/2細胞と3T3-L1細胞の細胞増殖を解析したところ、C310T1/2細胞ではMct1 siRNAを導入したC3H10T1/2細胞は細胞増殖が低下する一方で、3T3-L1細胞では増加する結果となった。細胞内乳酸濃度を測定するとMct1 siRNA導入後1日でControl群と比較し細胞内乳酸濃度が増加した。一方で、脂肪細胞分化後2週間ではMct1 siRNA導入群において優位に細胞内乳酸濃度の低下を認めた。 2つの細胞株において脂肪細胞分化に重要なmRNA発現量(Pparγ、aP2、Plin等)は、Mct1 siRNAにより促進が認められた。Oil Red O染色でも脂肪細胞分化の評価も行い、2つの細胞株において同様にMct1 siRNAにより脂肪細胞分化の促進が認められた。これらのことからMCT1 siRNAによる細胞内の乳酸の蓄積が間葉系幹細胞の分化の振り分けに重要である可能性が示唆された。また、次に、MCT1の輸送基質であるL-乳酸を2つの細胞株に添加すると脂肪細胞分化を促進することが明らかとなった。また、cDNAの網羅的に把握するためマイクロアレイ解析を実施した結果、間葉系幹細胞性の維持に働くWnt/β-cateninシグナルで誘導される遺伝子発現(Wisp2、R-spo2)がMct1 siRNAにより抑制することが明らかとなった。インスリンシグナルの下流で活性化するAKTおよびp38のMCT1による制御機構は認められなかった。 BMP2添加し、骨芽細胞分化を誘導したC3H10T1/2細胞ではMct1 siRNAの導入により骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現群が有意に低下し、アルカリホスファターゼ活性も有意に低下することからMCT1は間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進する因子であることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) MCT1による間葉系幹細胞の細胞分化振り分け機構の解明 1.Mct1 knockdown細胞をメタボローム解析を行い細胞内代謝物質を網羅的に解析する。2.1.で変化が認められた代謝産物を2つの細胞株に添加し分化における影響を解析する。 2) 骨組織、骨髄脂肪組織におけるMCT1の機能を解明する。1.本マウスは、Mct1遺伝子座にLacZ遺伝子が挿入されているため、β-ガラクトシダーゼ活性染色により骨・骨髄組織を中心にMct1遺伝子の発現を解析する。2.野生型マウスとMct1+/-マウスの大腿骨および脛骨の成長板を採取し、μCT解析を用いた骨形態計測にて評価する。また、成長板における骨芽細胞の分化成熟に対する影響を形態学的解析にて検討する。また、骨芽細胞および脂肪細胞分化関連遺伝子やタンパク質の発現を定量的PCR法、WB法、in situhybridization (ISH)法を用いて解析する。また、ヘマトキシリン・エオジン(H-E)染色による骨髄脂肪組織の組織解析を行い、野生型マウスとMct1+/-マウスについて脂肪細胞様細胞の総面積を算出し、骨髄における脂肪細胞の割合を評価する。3.卵巣摘出術(OVX)を施行した骨粗鬆症モデルを用いた解析する。野生型マウスとMct1+/-マウスにOVXを施行し、骨粗鬆症モデル動物におけるMct1遺伝子の機能を 2)-2.と同様に骨・脂肪組織について各種網羅的な解析を行う。
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Causes of Carryover |
Mct1 siRNAによる細胞内のシグナル伝達機構の変化についての解析は進んだが、細胞内の代謝物に及ぼす影響までは解析に至らなかった。MCT1は輸送の基質となる物質が多数存在するため、細胞内の挙動を観察するためには細胞内代謝産物をスクリーニングする必要がある。そのため、今までの使用計画を変更し、次年度に細胞内の代謝産物を測定し、MCT1のトランスポーターとしての機能を調べる予定である。細胞内代謝産物の測定としてメタボローム解析を行う費用として使用予定である。
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