2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K18964
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
竹縄 隆徳 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (30711270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TPM1 / プロテオーム解析 / SiRNA / 口腔扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性マウス線維肉腫細胞由来の造腫瘍性と転移能の低い退縮性クローンと造腫瘍性と転移能が高い進行性クローンを用いて、浸潤・転移能獲得につながる因子の同定とその機能解析および臨床的意義を検討した。プロテオーム解析を行い上記クローン細胞間において発現に差を認めたタンパク質を検出し、さらにヒト舌でのmRNAの発現レベルをUCSC Genome Bio Informaticsで確認可能な因子のうち、口腔扁平上皮癌細胞株と口腔角化細胞株間で特異的な発現変動を示す因子を検索することで、浸潤・転移能獲得につながる候補因子を同定した。また候補因子のSiRNAを用いて発現抑制を行い、増殖能や遊走能への影響を検討した。さらに111例の口腔扁平上皮癌患者について治療前生検組織の腫瘍細胞における上記候補因子の発現を免疫染色にて解析し、臨床病理学的諸因子や生存期間との関連性について解析した。上記によりTropomyosin 1 (TPM1)を同定した。またSiRNAにより口腔扁平上皮癌細胞のTPM1発現を抑制すると、増殖能および遊走能が亢進した。さらに111例中33例 (29.7%) でTPM1の低発現が認められ、111例中78例 (70.3%) でTPM1の高発現が見られた。T分類 (P = 0.0357)、N分類 (P = 0.0017)、Stage分類 (P = 0.0035)、転帰 (P = 0.0230)とTPM1の発現の間には統計学的有意差を認めた。TPM1の低発現例の5年生存率は60.6%、TPM1の高発現例の5年生存率は82.1%であり、統計学的有意差 (P = 0.0178)を認めた。また多変量解析の結果、TPM1の低発現は予後因子と考えられた。 TPM1の低発現は口腔扁平上皮癌の浸潤・転移能獲得において重要な役割を演じるとともに、有用な予後因子となり得る可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
背景因子が同一の単一腫瘍細胞由来の性質の異なる2種類のクローン細胞(造腫瘍性が弱く転移能のないクローン細胞と造腫瘍性と転移能が高いクローン細胞)を対象にプロテオミクスによる差次的発現解析を行い、有意差を認めたタンパク質の中で、特に口腔癌との関連性の大きいCalreticulin(CARL)、Tropomyosin 1 alpha chain(TPM1)、Heat shock protein 90kDa beta family member 1(HSP90B1)に着目し、これらの因子の臨床的意義を多角的に検討した上で、これら3因子を標的とし、浸潤・転移抑制を介して、癌との共生につながる新規治療法の開発を目指している。CARLに関しては解析が終わり、国際学会での発表を準備している。またTPM1に関しては臨床検体での検討と培養細胞を用いた機能解析が終了している。これから論文作成を視野に入れて準備中である。さらにHSP90B1に関しては、臨床検体を用いた検討を準備中であり、免疫組織染色可能な抗体を確認できた所であり、おおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HSP90B1に着目し、正常組織から異形成上皮、さらに口腔癌組織を対象としてHSP90B1の発現と臨床病理学的諸因子(年齢、性別、T分類、N分類、Stage分類、治療効果、転帰、生存期間、5年生存率)との関連性を検索する予定であり、これらによりHSP90B1の予後因子としての有用性を検証したいと考えている。また、HSP90B1SiRNAを用いて口腔癌細胞におけるHSP90B1発現を制御することにより、増殖能や遊走能、さらに細胞移動能への影響を検討する予定である。これらにより、HSP90B1の機能解析を進めて行きたいと考えている。なお可能であれば、ヌードマウス 腫瘍を用いて、HSP90B1SiRNAを投与して、背部皮下腫瘍に対する抗腫瘍効果や、転移モデルマウスを用いて、浸潤・転移能の抑制につながるか否かを検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
臨床病理学的諸因子(年齢、性別、T分類、N分類、Stage分類、治療効果、転帰、生存期間、5年生存率)の検討に時間を要し、in vitroの解析が予定した部分まで行うことができなかった。このため、物品購入が予定より少なくなった。 HSP90B1に着目しており、口腔癌組織を対象としてHSP90B1の発現と関連性を検索する予定である。次年度使用額は物品購入費とする予定でる。HSP90B1SiRNAの作成と、これを利用したin vitroでの増殖能や遊走能、さらに細胞移動能への影響を検討する予定である。これらにより、HSP90B1の機能解析を進めて行きたいと考えている。またヌードマウス腫瘍を用いて、in vivoにおける抗腫瘍効果や、浸潤・転移能の抑制の検討を、今年度に行う予定である。
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