2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K18964
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
竹縄 隆徳 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (30711270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性腫瘍 / 口腔癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性マウス線維肉腫細胞由来の、造腫瘍性と転移能の低い退縮性クローンと造腫瘍性と転移能が高い進行性クローンを用いて、浸潤・転移能獲得につながる因子の同定とその機能解析および臨床的意義の検討を継続した。プロテオーム解析を行い上記クローン細胞間において発現に差を認めたタンパク質を検出し、さらにヒト舌でのmRNAの発現レベルをUCSC Genome Bio Informaticsで確認可能な因子のうち、口腔扁平上皮癌細胞株と口腔角化細胞株間で特異的な発現変動を示す因子を検索することで、浸潤・転移能獲得につながる候補因子の一つとしてHSP90B1(Grip94)を同定した。 50例の口腔扁平上皮癌患者について、生検組織や手術材料を用いて腫瘍細胞におけるHSP90B1の発現を免疫染色にて解析し、臨床病理学的諸因子との関連性について解析した。なおHSP90B1の発現は肺癌での報告(Tumor Biol. 37, 14321, 2016)に準じて評価した。 その結果50例中26例 (52.0%) でHSP90B1の高発現が認められ、50例中24例 (48.0%) でHSP90B1の低発現が見られた。年齢 (P = 0.7549)、性別 (P = 0.2528)、T分類 (P = 0.1547)、N分類 (P = 0.4052)、Stage分類 (P = 0.2342)、転帰 (P > 0.9999)と、何の臨床病理学的諸因子もHSP90B1発現の間には統計学的有意差を認めなかった。症例数は少ないものの、HSP90B1の発現は口腔扁平上皮癌の浸潤・転移能獲得において重要な役割を演じているとは考えられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
背景因子が同一の単一腫瘍細胞由来の性質の異なる2種類のクローン細胞(造腫瘍性が弱く転移能のないクローン細胞と造腫瘍性と転移能が高いクローン細胞)を対象にプロテオミクスによる差次的発現解析を行い、有意差を認めたタンパク質の中で、特に口腔癌との関連性の大きいCalreticulin(CARL)、Tropomyosin 1 alpha chain(TPM1)、Heat shock protein 90kDa beta family member 1(HSP90B1)に着目した。これらの因子の臨床的意義を多角的に検討した上で、これら3因子を標的とし、浸潤・転移抑制を介して、癌との共生につながる新規治療法の開発を目指している。CARLに関しては解析が終わり、国際学会での発表を準備している。またTPM1に関しては臨床検体での検討と培養細胞を用いた機能解析が終了しており、論文作成中である。さらにHSP90B1に関しては、臨床検体50症例を対象とした免疫組織染色による検討を行なった。ただし、症例数が少ないことも一因かも知れないが、CARLやTPM1と比較して、HSP90B1にはバイオマーカーとしての有用性が確認されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HSP90B1に関して症例数を増やして、HSP90B1発現と臨床病理学的諸因子との関連性を検索する予定である。また、HSP90B1SiRNAを用いて口腔癌細胞におけるHSP90B1発現を制御することにより、増殖能や遊走能、さらに細胞移動能への影響を検討したいと考えている。これらにより、HSP90B1の機能解析を進めて、HSP90B1のバイオマーカーとしての価値を見極めたいと考えている。またヌードマウス 腫瘍を用いて、HSP90B1SiRNAを投与して、背部皮下腫瘍に対する抗腫瘍効果や、転移モデルマウスを用いて、浸潤・転移能の抑制につながるか否かを検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた実験の実施を延期したため、物品費の支出が予定より減少した。また新型コロナウィルス感染拡大防止のため、参加予定学会が全てリモート参加となり、旅費の支出が無かった。予定していた論文投稿を、次年度に先送りしたため、投稿費用等の支出が減少した。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、令和3年度使用額と合わせて研究運営費に充当して、予定研究を完遂し、論文投稿を行う予定である。
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