2019 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌においてHPV感染が予後マーカーとなり得る可能性の検討
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19K18976
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
河合 遼子 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (60812352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HPV / ウイルス / 口腔扁平上皮癌 / リンパ節転移 / 口腔病理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌の原因として知られるヒトパピローマウイルス(HPV)は、口腔癌を含む口腔粘膜疾患や咽頭癌、肛門や性器等の癌にも関与している。口腔領域の悪性腫瘍の中で最も発生頻度の高いのは口腔扁平上皮癌(OSCC)であり、主要な病因として、喫煙や飲酒が考えられている。近年、これらの主病因によるOSCCの発生率は減少傾向にあるが、若年者におけるOSCCや中咽頭扁平上皮癌(OPSCC)の発生率は増加傾向にある。OSCCやOPSCCの発生率増加には主病因以外の病因の関与が考えられており、HPVはその病因の1つとして知られ、HPV関連のOSCCやOPSCCへの関心が高まっている。OPSCCは多くの研究によりHPV関連OPSCCは、臨床的特徴として、early T Stage症例が多く、また、頸部リンパ節転移症例も多いと報告されている。そして予後に関しても、OPSCCでは治療法に関係なくHPV陰性患者よりもHPV陽性患者で良好な予後が報告されている。特に化学放射線療法に対する反応性が良い傾向がみられる。しかしながら、OSCCについては、HPV感染と予後に関する検索はこれまでほとんど行われておらず、未だ不明な点が多い。 本課題は、HPV感染率と予後との関連性について患者の追跡検索を行い、HPV遺伝子のintegrationの有無(E2/E6比)・E6のコピー数およびp16 INK4Aの発現、腫瘍浸潤とリンパ節転移に関連するMIA、MIA2の発現を検索し、HPV感染がOSCCの予後マーカーとして使用できる可能性を検討し、OSCCにおける予後の基礎データを得ることで、予防・治療に大いに寄与することを期待して取り組む研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本大学愛知学院大学歯学部附属病院にて口腔扁平上皮癌(OSCC)と診断された130サンプルを用い、生検および手術摘出されたホルマリン固定パラフィン包埋サンプルよりPCRにてHPV感染検索を行った。 また、現在、腫瘍成長および浸潤には、癌細胞のみではなく、その周囲組織から作られる微小環境も重要な役割があると考えられ、HPV関連SCCにおいても発癌後、実質の腫瘍細胞のみでなく腫瘍微小環境との関連が示唆される。Melanoma inhibitory activity (MIA)は、悪性黒色腫の細胞より初めて確認された分泌タンパクで、様々な腫瘍において腫瘍の増殖、浸潤、リンパ節転移との関連が報告されており、MIAの発現は悪性腫瘍の中でも腺癌では少なく、様々な扁平上皮癌で高発現との報告がある。今回、MIA、MIA2の発現を検索したところ、OSCCにおいてMIA、MIA2の高発現が認められ、また、HPV陽性OSCC症例ではHPV陰性症例と比べMIAおよびMIA2活性が低いことが示唆された。本研究の途中経過について、国内で学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
HPV関連扁平上皮癌(SCC)はHPV DNAのゲノムへの組み込みが生じ、さらに染色体不安定性や遺伝子異常の蓄積が生じることにより、浸潤癌へ移行する。HPV関連扁平上皮癌においてHPVゲノムが宿主細胞のDNAに組み込まれたintegrationの状態であるのか、宿主細胞のDNAに組み込まれていないDNAエピゾームepisomeの状態であるのかで、E6/E7の発現の活性化への影響があると考えられるためIn situ hybridizationによるHPV DNAの発現検索を行い、解析を行う必要がある。 また、現在、腫瘍成長および浸潤には、癌細胞のみではなく、その周囲組織から作られる微小環境が重要な役割を示し、HPV関連SCCにおいても発癌後、実質の腫瘍細胞のみでなく腫瘍微小環境との関連が示唆される。発癌後の腫瘍成長には血管新生、リンパ管新生がリンパ節転移に重要な因子と考えられ、実際、MIAおよびMIA2の検索を行ったところHPV陽性症例では活性が低かった。このことよりHPV感染の有無によりOSCCにおいて腫瘍細胞の増殖、腫瘍性血管新生およびリンパ管新生の促進因子の活性化に違いがあることが示唆され、HPV関連OSCCの特徴を腫瘍細胞の増殖、腫瘍性血管新生およびリンパ管新生に関連する因子の活性化についてさらなる検索を行っていく。
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Research Products
(1 results)