2019 Fiscal Year Research-status Report
恒常性調節型M2マクロファージによる口腔粘膜病変の抑制法
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19K18978
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
瀬野 恵衣 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (60780426)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Th1型免疫応答 / 急性GVHD / Lupus / 上皮親和性 / M1マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫応答型口腔粘膜疾患におけるエフェクター細胞の上皮指向性を誘導するInitiation期の病態解明に向けて実験を進めている。令和元年度(平成31年度)は「恒常性調節型マクロファージの不活性化機序の解明」を主目的とした。具体的には、マクロファージ・タイプにおける病変の発症および進行への役割を検討した。まず、P→F1 semiallogenic移植系を応用した急性GVHDモデル(AGVHD型)と低濃度水銀投与によるLupus型の2種類の動物モデルを作製した。口腔粘膜病変におけるT細胞およびマクロファージの浸潤様式を組織学的ならびに免役組織化学的に検索を行った。免疫担当細胞の浸潤様式および口腔粘膜上皮基底膜への自己抗体発現様式から、AGVHD型はTh1型免疫応答が病変の発症および進行に関与することが明らかとなった。一方、Lupus型口腔粘膜病変においては、自己抗基底膜抗体が産生されることなどからTh2型免疫応答の関与が明らかとなった。免疫担当細胞の浸潤様式においても、それぞれの病変に特徴的な所見がみられた。Th1型AGVHD口腔粘膜病変では、エフェクター細胞と考えられるT細胞が粘膜を被覆する上皮組織へ浸潤する特徴がみられた。マクロファージの浸潤様式については、T細胞の浸潤に一致してM1マクロファージが上皮基底膜に接着する様に浸潤することが明らかとなった。それに対して、Th2型であるLupus口腔粘膜病変においてはT細胞がエフェクター細胞と考えられたが、Th1型とは異なり上皮組織への浸潤傾向は認めなかった。また、病変部でのマクロファージ浸潤についてもM2マクロファージが優位である傾向を認めた。さらに、これらのマクロファージ性状について検索を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度(平成31年度)では、動物モデルにて誘導された口腔粘膜病変のマクロファージの動態について詳細に検討した。その結果、Th1型AGVHD口腔粘膜病変では、iNOSおよびarginase陽性のマクロファージ浸潤が病変初期での特徴であった。これらの細胞は上皮基底膜に付着するように浸潤し、一部の細胞は上皮層内への浸潤性も認めた。この免疫組織学的検索から、同病変ではM1マクロファージが優位であることが確認された。そして、M1マクロファージは、エフェクター細胞の上皮親和性機序を積極的にサポートする働きをもつことが示唆された。一方、Lupus型においては、CD163, CD206およびSTAT6陽性細胞が上皮下結合組織に浸潤をするが、上皮組織内への浸潤は認めなかった。これらの結果から、Th2型Lupus口腔粘膜病変はM2マクロファージが主体であることが確認された。次に、in vitroにおいて病変部に浸潤するM1およびM2マクロファージの性状について検索を始めている。これは、M2マクロファージに内在すると考えられている組織恒常性機能をについて検討する目的で始めている。現時点では、ナイーブ・マクロファージをM2マクロファージに分化誘導する過程で、Th1型病変部から回収したM1マクロファージ培養からの培養上清を添加して、M2マクロファージへの分化への影響を検討している。まだ予備実験の段階であるが、病変部M1マクロファージを短期間培養して得られた培養上清中には、ナイーブ・マクロファージのM2マクロファージへの分化を抑制する因子が含有されている可能性を示唆するデータが得られ始めている。今後、この組織恒常性機能を抑制する因子について検討する予定である
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は「恒常性調節型マクロファージの不活性化機序の解明」を主体とした研究を進める。令和元年度の続きで、M1マクロファージからの免疫恒常性に対する不活性因子の検索を行う。 具体的な検索方法としては、1)病変部M1マクロファージの不活性化に関連する遺伝子をマクロアレイにより明らかにする。2)短期培養した病変部M1マクロファージのcondition medium(CM)により培養されたナイーブ・マクロファージが、Th2型サイトカイン刺激によるM2マクロファージへの誘導機能が消失しているかを検討する。分化誘導カスケードの変化を遺伝子レベルで検索する。3)病変部M1マクロファージとTh2型サイトカイン刺激によりM2マクロファージに分化誘導した細胞を共培養を行う。この共培養により、M1およびM2マクロファージ性状の変化について検索する。とくに、M2マクロファージの遺伝子変化について詳細な検討を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度は本学で採択されているブランディング事業からの助成金の一部で、本研究内容の実験を遂行することができたため。また、次年度には当初予定よりアッセイ関連の予算が必要であるために当該年度の科研費使用を最小限に抑えた。
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