2019 Fiscal Year Research-status Report
DAMPsおよび咬合性外傷に注目した限局型侵襲性歯周炎の発症機序の解明
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19K18989
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
前川 祥吾 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (20793574)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 結紮誘導歯周炎 / NGS / 急速な歯周組織破壊 / DAMPs / S100A8 / S100A9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、無菌マウスおよび通常のマウスに対して結紮誘導歯周炎を惹起させ、次世代シーケンサーによる解析を行い、病原因子関連パターン(Pathogen-associated molecular patterns, PAMPs)と傷害因子関連パターン(Damage-associated molecular patterns, DAMPs)がどのように相関して結紮誘導歯周炎を発症・増悪させるのか検討することである。 9週齢のC57BL/6J雄野生型マウスを用いて、結紮3日後の結紮側、非結紮側の歯肉サンプルを用いてRNAシーケンス解析を行った。同定した発現変動遺伝子(differentially expressed genes; DEGs)に対して定量的PCRを行い、発現量を評価した。さらに、免疫組織染色を行い発現部位について評価を行った。DEGsと同定されたS100A8およびS100A9に関して、口腔内上皮の癌細胞であるCa9-22およびsiRNAを用いたin vitroの実験を行い、上皮細胞におけるS100A8ならびにS100A9の機能解析を試みた。 研究期間を通じて以下の知見が得られた。NGSによる解析により、78個のDEGsを同定、GO解析を行った。同定したDEGsに対し定量的PCRを行なったところ、S100a8、S100a9、Il1b、Ctskの有意な発現上昇を認めた。S100A8は、接合上皮に限局して発現しており、結紮による歯周組織の破壊に伴い、発現が増加し、結合組織内に浸潤していた。Ca9-22を用いた細胞実験では、S100A8およびS100A9の発現がsiRNAで消失した場合、CTSKが有意に減少していた。これらのことから、接合上皮におけるS100A8、S100A9は結紮により発現が上昇し、CTSKを介して歯周組織破壊に繋がることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
通常マウスに関しては順調に進んだが、歯周組織切片の作製、また免疫組織染色がなかなかうまくいかず、難航した。歯周組織は軟組織である歯肉や歯肉結合組織、さらに硬組織である歯槽骨、歯を同時に切り出し、切片を作製しなければならないため、脱灰や川元法など様々な手法を検討し、時間を要した。切片を綺麗に作製するためEDTAで脱灰後にパラフィン切片を作製し、組織学的解析を行った。残念ながら本研究期間においてS100A9およびLy-6Gの免疫組織染色がうまくいかず、S100A8のみ染色が成功した。Ca9-22を用いた細胞実験において、S100A8およびS100A9が同時に消失した場合では、NGS解析で同定したDEGsのIL1BとCTSKの発現に有意な変化を認め、DAMPsであるS100A8およびS100A9による歯周組織破壊のメカニズムの一端を確認することができた。しかし、予定していた無菌マウスにおける結紮誘導歯周炎は実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では、計画に遅れをとった無菌マウスにおける結紮誘導歯周炎、ならびに同歯肉組織の解析を行い、通常マウスとの違いを検討する。また、再度マウス歯周組織における免疫組織染色を成功させるため、凍結切片の作製やエピトープの異なる抗体の検討、また染色法についても検討を重ねる。さらに、同定したS100A8やS100A9に関し、歯周炎患者、特に限局型侵襲性歯周炎のヒト組織を用い、それらDEGsの発現に関して確認を行う予定である。
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Causes of Carryover |
歯周組織切片作製ならびに免疫組織染色、細胞とsiRNAを用いたトランスフェクション実験において、実験方法の模索、検討に想定していたよりも長期間を要した。そのため予定していた無菌マウスの結紮誘導歯周炎の実験に遅れをとり、それに費やす物品費が次年度に繰り越しとなった。本年度において、同実験は行う予定であり、費用も予定通り使用を考えている。
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Research Products
(2 results)