2019 Fiscal Year Research-status Report
Activin Aの二極性細胞分化誘導特性を基盤とした新規歯周組織再生療法の開発
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19K19001
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉井 英樹 九州大学, 大学病院, 助教 (80802280)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Activin A / 歯周組織再生 / 分化誘導能 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和年度において、Activin Aによるヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化誘導機序として、ActivinⅠ型受容体であるactivin like kinase-4 (ALK4)に着目し、ALK4をノックダウンしたヒト歯根膜細胞を用いて、Activin Aによるヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化が、ALK4-smad2/3を介したシグナル伝達経路により誘導されることを明らかとした。次に、ヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化誘導機序を明らかにするため、ALK1をノックダウンしたヒト前骨芽細胞を用いて、骨芽細胞分化に及ぼす影響について解析を行ったところ、Activin Aによるヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化が、ALK1-smad1/5/9を介したシグナル伝達経路により誘導されることを明らかとした。 さらに、ラット歯根膜組織傷害モデルを用いた実験においては、傷害された歯根膜組織近傍の歯根膜組織では、ALK4陽性の細胞が、傷害を受けていない歯根膜組織におけるALK4陽性細胞数と比較して増加していることが明らかとなった。また、傷害された歯根膜組織近傍の骨組織においては、ALK1陽性の細胞が骨芽細胞層(歯根膜組織と歯槽骨組織の境界面にある細胞層)において多く認められることもわかった。 以上より、Activin Aはヒト歯根膜細胞とヒト前骨芽細胞に対して異なった受容体を介してその分化誘導を行っていることが示唆され、Activin Aという1種のサイトカインのみで細胞により異なる分化誘導を行うことで、歯周組織再生に寄与していることが推察された。 現在、ALK1およびALK4の遺伝子配列を基にActivin Aと結合するシステインリッチな細胞外ドメインの解析を行っている所である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和年度において、in vitro実験において、Activin Aによるヒト歯根膜細胞の線維芽細胞様分化誘導機序が、ALK4-smad2/3を介したシグナル伝達経路により誘導され、一方でヒト前骨芽細胞の骨芽細胞分化誘導機序が、ALK1-smad1/5/9を介したシグナル伝達経路により誘導されることを明らかとした。 さらに、in vivo実験においては、ラット歯根膜組織傷害モデルを用いた実験において、傷害された歯根膜組織近傍の歯根膜組織において、ALK4陽性の細胞が、傷害を受けていない歯根膜組織におけるALK4陽性細胞数と比較して増加していることを明らかとした。また、傷害された歯根膜組織近傍の骨組織においては、ALK1陽性の細胞が骨芽細胞層(歯根膜組織と歯槽骨組織の境界面にある細胞層)において多く認められることもわかった。 以上より、Activin Aの機能として、ヒト歯根膜細胞とヒト前骨芽細胞に対して異なった受容体を介してその分化誘導を行っていることを明らかとすることができた。したがって、Activin Aという1種のサイトカインのみで細胞により異なる分化誘導を行うことで、歯周組織再生に寄与していることが推察され、Activin Aが歯周組織再生療法に用いる成長因子として有用であることが示唆された。 現在は、実際にActivin Aが歯周組織再生に有用であるかを確認するために、歯周組織傷害部位に直接Activin Aを応用する方法と、Activin A受容体由来のペプチドを作成し歯周組織欠損部位に応用する方法を同時に検討を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、ActivinAのⅠ型受容体は、1つの膜貫通領域を持ち、細胞内領域であるN末端側にはGSドメインを、C末端側にはセリン/スレオニンキナーゼドメインを有している。Activin Aのリガンドは、細胞外領域における、システインリッチなドメインと結合することが報告されている。このActivin Aの配列の中で、欠損領域の異なる変異体にGST標識したベクターを数種類作製し、GSTプルダウン法を用いて、ALK4およびALK1の各々と結合する変異体をそれぞれ選別し、ALK4およびALK1の各々のシステインリッチなドメインと結合するActivin Aの領域を同定する。その後、ALK4およびALK1に対する各々の結合領域を基にして、ペプチドをそれぞれ合成する。 その後、合成されたペプチドの機能を評価するために、それぞれのペプチドによる細胞分化誘導能を解析し、至適濃度や分化に要する期間を明らかにする。次に、この条件下で、2種類のペプチドを混合し、その細胞分化誘導能を解析することで、最適な混合条件の検討を行う。 最終的には、ペプチドの歯周組織再生誘導能の検討するために、ラット歯周組織傷害モデルを用いて、傷害した歯周組織に、ALK4およびALK1由来のペプチドを混合して応用し、その歯周組織再生能を検討する。同時に、実際にActivin Aが歯周組織再生に有用であるかを確認するために、歯周組織傷害部位に直接Activin Aを応用する方法も検討を行う。
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Causes of Carryover |
令和元年度は、旅費に関して、当初は国際学会に参加する予定であったが、これをキャンセルしたため、使用額が減額したことによる。次年度は、同学会に参加する予定にしており、この学会参加費用で使用する予定にしている。 また、次年度は研究計画にもあったペプチド作製を予定している。その際、Activin Aの配列の中で、欠損領域の異なる変異体にGST標識したベクターを数種類作製し、GSTプルダウン法を用いて解析する必要がある。その後、そこから得られたペプチドの合成に関しては、過去に作製実績のある会社に外注して作製することを予定している。このように、上記実験遂行のためには本年度以上の経費が必要となる。したがって、次年度により多くの支出が予定されるので、本年度の支出予定額を次年度に繰り越した。 さらに、来年度は本プロジェクトに関する論文を執筆する予定にもしているので、その投稿料にも科研費を使用する予定にしている。
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[Presentation] Effects of dopamine on odontoblastic differentiation through PKA signaling.2019
Author(s)
Shoko Fujino, Hamano Sayuri, Atsushi Tomokiyo, Daigaku Hasegawa, Shinichiro Yoshida, Hideki Sugii, Ayako Washio, Hiromi Mitarai, Naohisa Wada, Chiaki Kitamura, Hidefumi Maeda.
Organizer
The 97th General Session & Exhibition of the IADR
Int'l Joint Research