2020 Fiscal Year Research-status Report
過酸化水素光分解殺菌法を応用した低侵襲齲蝕治療の確立
Project/Area Number |
19K19014
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白土 翠 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60708501)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過酸化水素光分解殺菌法 / バイオフィルム / 低侵襲齲蝕治療 / ヒドロキシルラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、過酸化水素光分解殺菌法の多菌種バイオフィルムに対する殺菌効果と歯質脱灰抑制効果を実証し、新しい齲蝕治療法の基盤技術を確立することを目的として行っている。 2019年度の研究では、単菌種に加え多菌種で構成された実験的バイオフィルムモデルを確立し、殺菌試験を進めてきた。本殺菌試験はバイオフィルムに対する過酸化水素光分解殺菌法の口腔内における効果をより反映するものであり、試験結果から口腔内バイオフィルム(デンタルプラーク)への高い殺菌効果が示唆された。 本年度は、これまでの殺菌試験の結果を踏まえながら多菌種バイオフィルムモデルの改良やq-PCRによる分析を行うことで知見を深め、包括的なデータを取得することができた。q-PCR 分析の結果から、確立した実験的バイオフィルムが多菌種で構成されていることが確認できた。よって、過酸化水素光分解殺菌法は単菌種のみならず多菌種で構成されたデンタルプラークに対しても有効であり、歯質の脱灰抑制に効果を発揮する可能性が示唆された。更に、ラット歯を試料として用いたex vivo 試験にも着手することができた。これまでの研究で使用してきたハイドロキシアパタイトディスクは、歯の構成成分ではあるが、より実際の条件に即した試験を行うためにラット上顎第一大臼歯を用いた試料を作成し、実験に用いた。まずは、使用するバイオフィルムを主要な齲蝕関連細菌として知られるStreptococcus mutans による単一菌バイオフィルムとし、試料上での形成の確認・ラット歯脱灰に要する時間や条件・脱灰の停止方法・脱灰の評価方法などの検討を行った。 本年度の研究で、in vitro における多菌種バイオフィルムに対するより詳細なデータの取得、ex vivo 試験における適切な条件設定に必要なデータの構築ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナ感染症により研究活動が制限された時期があり、それに伴って予定していた実験にやや遅れが生じた。 しかしながら、昨年度の研究を補間するデータの取得ができたこと、予定した大枠の実験には着手できたことは十分な成果であり、今後の研究への準備もある程度整っているため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から得られたデータを用いて、以下に示す計画に沿って研究を行う。 Ex vivo 試験:2020年度に取得したデータをもとにラット歯脱灰の条件設定を行い、ラット歯上にバイオフィルムを形成、本殺菌法にて殺菌処理を行って対照群との齲蝕深度を比較検証する。その他、バイオフィルム内部のpH測定やq-PCRを用いた分析、歯質成分の変化の分析等も行う。 In vivo 試験:ラットに特殊試料(スクロース含有)を与えて齲蝕を誘発し、過酸化水素光分解殺菌法の齲蝕進行(脱灰)抑制効果を検証する。殺菌に使用する装置はこれまでに使用してきたLED装置とし、出力や処理時間などの条件設定は、in vitro およびex vivo 試験の結果を参照して検討する。 上記の実験が網羅的に行えるよう、当初の計画を修正して研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進捗しているが、進捗状況でも記載した通り研究の制限により当初の計画から若干の遅れが生じている。それに伴って、計画よりも支出額が減少したため一部を次年度使用とした。 使用計画としては、2021年度に計画している研究に加えて一部の殺菌試験や分析を持ち越した予算で遂行する。
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