2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K19023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣瀬 奈々子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10780819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新たな薬剤耐性菌の出現とその拡大が医療上の大きな問題となっている。口腔領域における各種抗菌成分の実用化にあたって、口腔細菌に対する抗菌効果についてはこれまでにも多くの研究がなされてきたが、口腔細菌の薬剤耐性獲得に関しては詳細な検討がほとんど行われておらず、依然として不明な点が多い。そこで本研究では、口腔内で使用される各種抗菌成分に対する口腔細菌の耐性獲得の有無、およびその耐性獲得機構の解明を目的としている。 本年度は、う蝕及び感染根管の原因となる主要な口腔細菌を対象とし、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウムに加えて、口腔細菌の増殖や代謝を抑制することで知られているホウ酸イオンおよびフッ素イオンを含めた4種の抗菌成分に対して、最小発育阻止濃度(MIC)測定を行い、耐性獲得の有無について検討を行った。 う蝕関連細菌としてStreptococcus mutans UA159、感染根管関連細菌としてEnterococcus faecalis SS497を対象とし、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、ホウ酸イオンおよびフッ素イオンの4種の各成分のMIC値をmicro dilution assayにて測定した。続いて、MIC判定時に増殖が認められたもののうち、最大濃度の抗菌成分を含む菌懸濁液を用いて2 x 107 CFU/mLの菌液を再度調整し、10回までMIC測定を繰り返した。その結果、E. faecalisではクロルヘキシジンおよびフッ素イオンに対してMIC濃度の緩やかな上昇を認め、E. faecalisがクロルヘキシジンおよびフッ素イオンに対して薬剤耐性を獲得する可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究実施計画に則り、各種抗菌成分に対する口腔細菌の耐性獲得の有無の検討を行い、前述のような結果を得た。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に得られた実験結果に基づき、耐性獲得を示した口腔細菌を対象として遺伝子発現解析を行い、主因となる薬剤耐性機構の解明を目指す。具体的には、耐性獲得前後のE. faecalisの菌懸濁液からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて、耐性株にどのような遺伝子発現の変化が生じているか網羅的な解析を行い、耐性獲得機構の解明を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
令和元年度は薬剤耐性獲得の有無の検討を主に行い、薬剤耐性獲得メカニズムの解明のための遺伝子解析を行っていないため、その他として計上していた経費が次年度使用額として生じた。 次年度は引き続き遺伝子解析を行うための試薬や器材を購入することに加え、外注委託で次世代シークエンサーによる遺伝子解析を行っていくため、研究計画通りに研究を進めていくことで次年度使用額も問題なく使用することができると考える。
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