2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K19023
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣瀬 奈々子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10780819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新たな薬剤耐性菌の出現とその拡大が医療上の大きな問題となっているが、口腔領域で実用化されている抗菌成分に対する口腔細菌の薬剤耐性獲得に関しては詳細な検討がこれまでほとんど行われておらず、依然として不明な点が多い。そこで本研究では、口腔内で使用される各種抗菌成分に対する口腔細菌の耐性獲得の有無、およびその耐性獲得機構の解明を目的とし以下の実験を行った。 初年度にはう蝕及び感染根管の原因となる主要な口腔細菌を対象とし、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウムに加えて、口腔細菌の増殖や代謝を抑制することで知られているホウ酸イオンおよびフッ素イオンを含めた4種の抗菌成分に対して、最小発育阻止濃度(MIC)測定を行い、耐性獲得の有無について検討を行った。その結果、Enterococcus faecalisではクロルヘキシジンに対するMIC値が約4倍に上昇した(CHX耐性群)。そこで最終年度には、次世代シークエンサーを用いて、CHX耐性群が野生株に比べてどのような遺伝子発現の変化が生じているか解析を行った。その結果、CHX耐性群では野生株と比較して25の遺伝子の発現が上昇し、151の遺伝子の発現が低下していることが分かった。遺伝子発現解析により得られた発現変動遺伝子の特徴を推定するため、上昇遺伝子群・減少遺伝子群それぞれについてGene Ontologyエンリッチメント解析を行ったところ、栄養不足に対するストレス応答に関連する遺伝子の発現上昇、およびペプチド代謝経路に関連する遺伝子群の発現低下が示唆された。今後の本研究の展望として、各抗菌成分に長時間暴露したにもかかわらず、MIC測定において大きな変化を認めなかったクロルヘキシジン以外の群についても次世代シーケンサーにより遺伝子発現の変化の有無を解析し、より詳細な耐性獲得機構を追求することを計画している。
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