2019 Fiscal Year Research-status Report
In vitro培養系での口腔バイオフィルムの再現と抗菌性材料の評価
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19K19024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神野 友樹 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (10839202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 歯科材料 / 抗菌性 / 抗プラーク性 / 歯学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、in situでのバイオフィルムの性状を解析するため、市販コンポジットレジン(CR)を用いて作製した硬化試料をアクリル製スプリントに固定し、4名のボランティアの口腔内に装着した。24時間装着後のCR試料上に形成されたバイオフィルムの厚み、ならびに生菌率を測定したところ、それぞれ29μm、32%であった。 つづいて、試作バイオリアクターを構築し、バイオリアクターを用いて材料表面に形成されたバイオフィルムの性状をin situでのものと比較した。今回構築したバイオリアクターは二系統の流路を備えたフローセルタイプで、フローセル内にCR試料を固定し、一方の流路から菌液を30 mL/hrで滴下し、もう一方の流路から0.5%スクロース溶液を培養開始0、6、12時間後に 0、15、30、または60分間試料上に滴下しながら培養した。滴下する菌液には、ヒト唾液から採取した細菌懸濁液を人工唾液あるいはBHI液体培地を用いて希釈したものを使用した。 24時間培養後に、試料上に形成されたバイオフィルム中の細菌数、厚み、ならびに生菌率を測定したところ、BHI培地で希釈した菌液を滴下することで形成されたバイオフィルム中の生菌率は、人工唾液で希釈した菌液を用いた場合よりも有意に高く、口腔内のバイオフィルムと同等であった。また、スクロースの滴下時間が長くなるに従って、形成されたバイオフィルムの厚みが増加し、とくに、スクロースを非滴下あるいは15分間(計45分間)滴下させた場合は、バイオフィルム中の細菌数および生菌率が口腔内で形成されたものと同等で、厚みにも有意差が認められなかった。したがって、BHI培地を使用し、0.5%スクロース溶液を非滴下あるいは計45分間滴下しながら培養することで、実際の口腔内と同等の性状のバイオフィルムをCR試料上に形成できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度の研究実施計画に則り、独自のバイオリアクターの構築、およびその培養条件の確立に成功し、前述のような結果を得た。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に得られた結果に基づいて、亜鉛含有ガラス配合セメントのバイオフィルム形成抑制効果をバイオリアクターを用いて評価する。
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Causes of Carryover |
(理由) 上述のように、本年度は、独自のバイオリアクターの構築、およびその培養条件の確立に関しては、当初の計画以上に多くの知見を得ることができた。しかし、当初予定していたバイオフィルムの細菌叢解析に関する評価試験を実施することができず、それに係る消耗品を令和元年度に購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度に細菌叢解析に係る消耗品を購入する予定である。
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