2022 Fiscal Year Research-status Report
ミュータンスレンサ球菌表層タンパクの病原性解析に基づく齲蝕予防法の開発
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19K19033
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
勝俣 環 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (70812288)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | S. mutans / SortaseA |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptococcus mutansはう蝕原性細菌であり、菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素としてSortaseを保有している。本研究では、Sortase依存的に菌体表層へ局在化する6種類のタンパク(WapA, FruA, SpaP, WapE, GbpC, DexA)の網羅的解析を行い、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定し、う蝕予防に利用することを目的とする。 Sortase遺伝子、その他表層タンパク6種の計7種類について遺伝子欠損株を作製し、性状解析を進めている。前年度までに行った初期付着能の検証、唾液凝集能の検証ではSortase関連遺伝子欠損株と野生株の間に有為な差を認めた。本年は口腔細菌に対する共凝集能、菌体表層の疎水性について検証した。 S. mutans野生株のいくつかの口腔細菌に対する共凝集能を調べたところ、Fusobacterium nucleatum、Porphyromonas gingivalisに対しては共凝集が認められた。続いて各Sortase関連遺伝子欠損株について検証を行ったところ、F. nucleatumとの共凝集は、srtA欠損株で共凝集能の低下、wapA欠損株でわずかな低下を認めた。spaP欠損株では反応後1時間経過地点では有意な低下を示したが、終了時には親株とほぼ同等の値を示した。P. gingivarisとの共凝集では、srtA欠損株で共凝集能の低下を認めたが、6つの欠損株の中では共凝集能の阻害が認められたものはなく、反対にspaP、wapE欠損株ではわずかに共凝集が促進された。 菌体表層の疎水性については、srtA欠損株、spaP欠損株、gbpC欠損株の疎水性が減少した。細菌の疎水領域は細菌の付着に影響を与える因子とされ、この結果は先の初期付着能の検証結果を裏付けるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortase依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。ゆえに、今回の研究ではペプチド、抗体作成は行わず、性状解析を中心とするように研究計画の変更を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
Streptococcus mutansは通性嫌気性グラム陽性菌であり、う蝕を誘発するため、歯面へ付着・集積する能力、スクロースを代謝してグルカンを産生する能力、糖を代謝して有機酸を産生する能力、酸性環境下に適応する能力などの病原性因子を保有している。グラム陽性菌において、菌体表層タンパク質は宿主細胞への付着・侵入、食細胞に対する抵抗性、栄養源の分解などの機能を保持し、いくつかの結合様式で細胞壁に局在するが、その中のひとつにSortaseによる結合がある。このような病原性を発揮する因子として、一部の表層因子の報告はあるが、網羅的な報告はまだない。 当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortase依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。そこで本研究の推進方策を、S. mutansの代表的な表層因子としてのSrtA依存性タンパク質についての網羅的な解析を主軸としたものに変更する。 現在までに行っている初期付着能、唾液凝集能、共凝集能、菌体表層の疎水性に加えてバイオフィルム形成能、細胞間基質結合能についても検証を予定する。初期付着能については、付着対象を現在行っている細胞付着用プラスチック製カバースリップに加えて歯冠修復材料についても検証する。 また、各遺伝子の多型性について検証するため、S. mutans臨床分離株の全ゲノム配列から各タンパクについて遺伝子系統樹を作成を予定している。
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Causes of Carryover |
研究費申請した当初は二年間で行う研究計画であったが、コロナ禍となり学会などの参加が困難になったこと、育児休暇取得期間の中断による研究計画の大幅な変更などにより次年度使用額が生じた。 発生した金額については、老朽化した実験機器のメインテナンス等に使用予定である。
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