2023 Fiscal Year Research-status Report
ミュータンスレンサ球菌表層タンパクの病原性解析に基づく齲蝕予防法の開発
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19K19033
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
勝俣 環 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (70812288)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Streptococcus mutans / SortaseA |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptococcus mutansはう蝕原性細菌であり、菌体表層タンパク質の局在に関与する酵素としてSortaseA(SrtA)を保有している。本研究では、SrtA依存的に菌体表層へ局在化する6種類のタンパク(WapA, FruA, SpaP, WapE, GbpC, DexA)の網羅的解析を行い、歯科材料表面の定着に関与するタンパクを同定し、う蝕予防に利用することを目的とする。 SrtA遺伝子、その他表層タンパク6種の計7種類について遺伝子欠損株を作製し、①唾液成分への付着能、②唾液凝集能、③共凝集能、④バイオフィルム形成能、⑤菌体表層の疎水性、⑥細胞間基質結合能について解析を行った。 SrtAの不活化により菌体表層タンパク質の局在性が失われ、それによりSrtA欠損株は、唾液成分への結合、唾液凝集、F. nucleatum およびP. gingivarisとの共凝集、疎水性、バイオフィルム形成、細胞間基質への結合を低下させた。 SpaP は唾液成分への付着、唾液凝集、F. nucleatum との共凝集、疎水性、Ⅰ型コラーゲンへの付着の減少がみられ、様々な基質への結合に主要に関与が示唆された。同様に、GbpC は唾液成分への付着、疎水性の減少を示し、細菌の付着に関与すると考えられる。DexA、WapA、FruA および WapE は今回の検証では大きな変化は見られなかった。 上記の通り、SrtA依存性タンパクの付着性への関与が示されたため、次段階として付着対象として歯科材料を使用した検証を行う。現在はコンポジットレジンに対する付着性を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortaseA依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。ゆえに、今回の研究ではペプチド、抗体作成は行わず、性状解析を中心とするように研究計画の変更を行ったため、当初計画よりも進捗は遅れている。 SortaseA依存性タンパクの付着への関与は示され、現在は実際の歯科材料に対する付着を検証中である。そのため、補助事業期間延長を申請、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
Streptococcus mutansは通性嫌気性グラム陽性菌であり、う蝕を誘発するため、歯面へ付着・集積する能力、スクロースを代謝してグルカンを産生する能力、糖を代謝して有機酸を産生する能力、酸性環境下に適応する能力などの病原性因子を保有している。グラム陽性菌において、菌体表層タンパク質は宿主細胞への付着・侵入、食細胞に対する抵抗性、栄養源の分解などの機能を保持し、いくつかの結合様式で細胞壁に局在するが、その中のひとつにSortaseによる結合がある。このような病原性を発揮する因子として、一部の表層因子の報告はあるが、網羅的な報告はまだない。 当初は関連が疑われるタンパクについてはペプチド、抗体の作製を行う予定であったため、6種のSortase依存性タンパクについて各々大腸菌発現株を作製したのだが試行を重ねてもタンパク発現が確認されなかった。そこで本研究の推進方策を、S. mutansの代表的な表層因子としてのSrtA依存性タンパク質についての網羅的な解析を主軸としたものに変更した。 ①唾液成分への付着能、②唾液凝集能、③共凝集能、④バイオフィルム形成能、⑤菌体表層の疎水性、⑥細胞間基質結合能について解析を行ったところ、各表現型のなかでもSrtA依存性タンパクの付着性への関与が強く示された。ゆえに次段階として付着対象に実際の歯科材料を使用した検証、所属学会での発表を予定している。
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Causes of Carryover |
研究費申請を行った当初は二年間で行う研究計画であったが、コロナ禍となり学会参加が困難となったこと、育児休業取得期間の中断、その後研究再開後にも育児等の理由で研究の進捗が遅れ、研究計画についても大きな変更を行っている。そのため、次年度使用額が生じており、また令和6年度までの補助事業期間延長申請を行い承認されている。 発生した金額については、当該研究遂行のための追加実験に関わる物品、研究成果発表、老朽化した実験機器のメインテナンス等に使用予定である。
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