2019 Fiscal Year Research-status Report
インプラント周囲炎に対するプロバイオティクス・アプローチの確立
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19K19061
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
蓮池 聡 日本大学, 歯学部, 助教 (60636413)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インプラント周囲炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではインプラント周囲炎に対する治療法として、チタンの微細顆粒の存在をインプラント周囲骨吸収の引き鉄とする病因論におけるプロバイオティクスの効果を検証する。マクロファージがチタン顆粒を貪食した際の炎症性サイトカイン放出に抑制的に作用する乳酸菌種を同定し、同定された乳酸菌をプロバイオティクスとして用いた際のインプラント周囲骨吸収抑制効果を検討する。 まず、令和元年度は先行研究にて行ったラット動物実験のマイクロCT像および組織切片評価を行った。ラット上顎臼歯抜去後、チタン製インプラントを埋入し、インプラントプラットフォーム周囲にチタン顆粒が散布された。その結果、マイクロ CT ならびに硬組織研磨標本において、インプラント周囲に 骨吸収像が確認された。ゆえに本研究においてもこの動物実験モデルを用いることが可能であると判断した。 続いて、インプラント周囲炎に対しプロバイオティクスを用いた過去の研究のシステマティックレビューを行い、プロバイオティクスとして効果が得られると思われる細菌種の候補を絞った。その結果11件の先行研究が検索され、多くの研究においてLactobacillus reuteri がインプラント周囲炎に効果を示す可能性があることがわかった。本研究ではLactobacillus reuteri に候補を絞り、研究を行うこととした。 In vitro研究を行うにあたり、予備実験として口腔扁平上皮癌由来細胞を培養した。0.1mg/mlに調整したチタン微小顆粒を細胞に滴下し、IL-8 発現の経時的評価を行った。その結果、顆粒滴下群と非滴下群において発現量に統計学的有意差が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、細胞生物学的検証によって、マクロファージがチタン顆粒を貪食した際の炎症性サイトカイン放出に対する乳酸菌の影響を検討する計画である。プロバイオティクス療法に用いられている乳酸菌は種々存在するが、これまでの研究のシステマティック・レビューを行うことにより、インプラント周囲炎治療においては、ほぼ全ての研究においてLactobacillus reuteriが用いられ、良好な結果を示していることがわかった。ゆえに各種菌種の比較検討実験は行わず、Lactobacillus reuteriに絞った研究を進める旨、研究計画を変更した。令和元年度は予備実験として、口腔扁平上皮癌由来細胞を培養し、チタン顆粒の影響を検証した。その結果、扁平上皮に対するチタン顆粒滴下の影響は認められなかった。今後は当初計画していたマクロファージおよび単球系細胞における検証を行い、再度チタン顆粒が炎症性サイトカイン発現に及ぼす影響を同定する。そのうえで、Lactobacillus reuteriの炎症抑制効果を検討する必要がある。また動物実験モデルの再検証も行った。その結果、我々が構築したラット実験もであるは本研究においても十分利用可能であることが示された。 上記のように、in vitroおよび in vivo 研究の双方において、研究条件設定を行うところまでしか進んでおらず、プロバイオティクスを用いての検証を実現することができなかった。ゆえに「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細菌種をLactobacillus reuteriに限定し、in vitro および in vivoの研究を並行して進める。 In vitroにおける検証ではマクロファージ系細胞である RAW 246.7 細胞を用いた研究に移行する。市販のチタン微小顆粒 (平均直径 3.23 μm) からSchwab らの方法にて可能な限りLPSを除去し、LPS が付着していないことを Limulus アッセイにて確認する。チタン微小顆粒濃度が0.1mg/ml と なるように細胞培養液を調整し、この培養液にて細胞を 12 時間通常培養条件にてインキュベートする。そこにLactobacillus reuteri をそれぞれ様々な濃度で添加し、至適培養環境において培養する。回収した上清において、Real-time PCR法 ならびに ELISA を用い、遺伝子レベルおよびタンパクレベルにて炎症性サイトカインの発現を検証する。 In vivo研究では、事前研究により確立したラット実験モデルを用いる。チタン顆粒を無血清培地中にて調整し、LPS除去チタン顆粒とする。 LPS 除去チタン顆粒に P.g 由来 LPS 加えて、LPS 付着チタン顆粒とする。インプラント埋入後10日後ならびに20日後に LPS 除去チタン顆粒もしくは LPS付着チタン顆粒を混和した無血清培地をインプラント全周に散布する。インプラント埋入後 30日後より乳酸菌含有滅菌水を与える。30日間の飲水後、インプラント埋入後にラットの安楽死を行う。 動物実験用マイクロCTを用いた形態的評価を行い、脱灰標本による組織学的評価、 免疫染色により破骨細胞分化因子および炎症性サイトカインの発現を検証する。
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Causes of Carryover |
令和元年度は上皮細胞におけるチタン微小顆粒影響の検証、動物実験モデルの検証を行ったものの、プロバイオティクスの影響を検証することはできなかった。予定していた研究計画が遅延しており,それに伴い計画の後半に使用予定であった物品を購入しなかったため,若干の残金が生じた。令和2年度ではin vitroによる細胞生物学的研究とin vivoにおける動物実験を並行して実施する予定であり、また海外学会における成果報告も計画している。繰越金は令和2年度の助成金と合わせて、これらに使用する予定である。
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