2019 Fiscal Year Research-status Report
微弱通電により歯科補綴物を除去可能なスマートセメントの創製
Project/Area Number |
19K19114
|
Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
梶本 昇 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (30824213)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | イオン液体 / セメント / 接着 / 脱着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,イオン液体をグラスアイオノマーセメントに添加した試作セメントを作製し,接着強さ試験と細胞毒性試験を行い,当該セメントの適切な組成の検討を行った。 2種類のイオン液体TH(アンモニウム系のイオン液体:tris (2-hydroxyethyl) methylammonium methylsulfate),CD(コリン系のイオン液体:Choline dihydrogen phosphate)をグラスアイオノマーセメントに添加した試料セメントを作製した。いくつかの組成の試料セメントで被着体(銅)同士を接着し,直流電源にて通電を行った後,せん断接着強さ試験を行った。通電によって接着強さが低下するにはTH,CDともに10%以上の添加が必要であった。また,TH,CDともに15%添加した場合,非通電時の接着強さが低下した。 上記結果を踏まえ,THおよびCDを10%添加したセメント硬化体の細胞毒性を抽出法で評価した。マウス線維芽組織由来L929細胞を希釈した抽出液中で24時間培養し,MTTアッセイにより生存率を算出した。生存率を抽出液の希釈濃度に対してプロットし,50%生存率を求めた。イオン液体非添加の条件と比較して,THの添加,CDの添加によって50%生存率が低下することはなかったため,10%のTH,CDの添加では細胞毒性は増加しないと考えられた。 接着強さおよび生体適合性の観点から,グラスアイオノマーセメントへのTHやCDの添加は10%程度が適量だと示唆された。今後の研究の結果を材料設計に更にフィードバックすることで,当該セメントの創製を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グラスアイオノマーセメントにイオン液体を添加したセメントの検討を行っている。当初はイオン液体THの添加を中心とした検討を進める予定であったが,研究初期の段階から別のイオン液体であるCDの添加も同時に検討を進めたため,予定より遅れることとなった。 また,通電による接着強さ低減のメカニズムの検討を進めているが,社会情勢的に外部施設への出張が困難となったことにより,実験が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
基礎実験の段階であるが,いくつかの金属被着体で,通電によって接着強さを低減させることが可能だと判明している。また,通電時の反応は金属種によって異なることが判明しつつある。 より詳細なメカニズムを明らかにするため,接着界面の電気化学反応(腐食または気泡発生)を調査する。 その結果を元に,適応可能な条件や適切な通電条件を明らかにすることで,冠などの除去への有効性を検討していく。
|
Research Products
(1 results)